5分でわかるケインズの雇用・利子および貨幣の一般理論 | ケインズ経済学の基礎

国家運営や財政政策に多大な影響を与えたと言われているケインズの「雇用・利子および貨幣の一般理論」について5分でわかりやすく解説します。

ケインズはマクロ経済学の基礎を作ったとも言われており、経済学の発展に大きく寄与しています。

この記事を読めば、ケインズ理論の重要なエッセンスを理解できるはずです。

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経済学全体についてざっくりと理解したい方は下記のリンクで解説しています。経済学を俯瞰することで、よりこの記事の理解が深まります。

わかりやすい経済学 – 古典経済学から近代経済学まで10分でざっくり解説

ケインズとは?

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ジョン・メイヤー・ケインズはイギリスの経済学者です。

彼が発表した「雇用・利子および貨幣の一般理論」は、世界の経済政策に多大な影響を与えました。ケインズがこの理論を発表した当時はアダム・スミスの考えをもとにした「近代経済学」が主流でした。政府の介入を抑えてマーケットに任せるべきだという考え方です。

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一方で、近代経済学への批判としてマルクスの資本論が対をなしていました。この資本論では、資本主義経済には限界があり、労働者と資本家の格差は広がり続けると指摘されました。

マルクスの資本論については下記リンクで解説しています。

10分でわかるマルクスの「資本論」入門。初心者にも分かりやすく要約・解説します。

しかし、ケインズは適切に政府が市場に介入していけば資本主義は持続可能だと説きました。

ちなみにケインズは、古典経済学を近代経済学へと押し上げた「マーシャル」の教え子です。マーシャルは、みなさんがよく知る「需要曲線」と「供給曲線」が交わる点で価格が決定するという「一般均衡理論」を体系化した人物です。詳しくは下記のリンクで解説しています。

5分でわかるマーシャルの経済学原理 | 新古典派経済学の始まり

ケインズ以前は均衡財政

ケインズ以前の、一般的な財政政策は「均衡財政」でした。

財政政策って何?
財政政策とは、政府がお金を支出して経済に影響を及ぼす政策のこと

例えば、公園などの公共施設を作ったり、補助金を出したりすることなどです。公共施設を作るには、工事現場の労働者が必要ですから、経済の刺激につながります。一方で「金融政策」は、中央銀行が金利をコントロールすることで経済を刺激することです。

均衡財政とは、「経常支出総額が経常収入総額に等しい財政状態」のことを言います。つまり「税金で得られる収入の分のみ、政府は支出しましょう」という考え方です。個人に置き換えると、給与の範囲内に支出は抑えましょうという考え方です。

しかし「均衡財政」には問題点があります。一度不景気に陥るとそのスパイラルから抜け出せなくなる点です。企業の売り上げが下がれば、従業員の給与が減ります。従業員の給与が減れば、税収入が減ります。税収入が減れば政府の支出が減ります。政府の支出が減れば、雇用が減少します。つまり均衡財政を行い続ける限りは、不景気から抜け出せないとケインズは説きました。

財政政策で景気はコントロールできる

ケインズは、政府が積極的に介入することで景気はコントロール可能だと提唱しました。

つまり国は、不景気の時は積極的に借金をして、公共事業に支出し、雇用を生み出します。雇用が生まれれば、国民の給与が上がりますから、税収入が増えます。その増えた税収入で借金を返せばいいと考えました。

エジプトのピラミッドは、国王の墓ではなく景気対策だったとの説が近年有力になってきました。ピラミットを公共事業として行うことで国民の仕事が増え、消費が促され、税収入を増やす。ケインズは、ピラミッドと同じように、不景気の時は、国が借金をしてでも公共事業を増やして、国民の所得を増やすべきだと考えた革命的な人物でした。

MEMO
政府がお金を発行していると勘違いしがちですが、国は中央銀行からお金を借金しています。中央銀行の仕組みについて知りたい方は下記のリンクで解説しています。
10分で分かる中央銀行の仕組み。中央銀行と紙幣の歴史

資本主義の問題点

ケインズは資本主義の問題点を下記のように述べています。

我々が生活している経済社会の顕著な欠陥は、完全雇用を提供することができないことと、富および所得の恣意的で不公平な分配である。

ケインズ

資本主義経済という仕組みは必ず、失業が生まれ、完全雇用は提供できないとケインズは述べました。積極的に政府が介入することで景気を安定させることが必要なんだと述べました。

今となっては当たり前のことですが、当時としてはかなり画期的な考え方でした。

利子率と利潤率

景気を回復させようとして、政府が積極的に公共投資をしたとしても、所得を全て貯蓄されてしまっては消費が増えずに不景気のままです。

ケインズ理論は利子率を下げ、利潤率を上げることを同時に行わなければ成立しません。

  • 利子率
    銀行にお金を預けておいて増える割合を言います。利子率が年5%で100万年預ければ年5万増えます。
  • 利潤率
    事業に投資した場合に増える割合です。利潤率が年10%で100万年投資すれば年10万円増えます。

もし利子率が高く、利潤率が低ければ、所得は全て銀行に預けてしまいます。逆に利潤率の方が高ければ、給与所得は多くの事業への投資を生み景気が上向いていきます。

ケインズ理論の欠点:ハーヴェイロードの前提が崩れた

ケインズ理論は「ハーヴェイロードの前提が崩れた」と言われ、欠点が指摘されています。ハーヴェイロードとはケインズの出身地です。

ケインズ理論は
・国が借金をして公共投資を行い
・雇用と所得が増えて
・国の税収が増えれば
国は借金を返すだろうという前提に立っていました。

しかし国は借金を返すことがありませんでした。なぜなら急に公共投資をやめれば、有権者や国民から反発されますし、景気が上向いたからといって増税を行なっても反発されます。

ケインズは、借金があるのだから国家は合理的に意思決定をするだろうという前提で理論を組み立てましたが、実際はそうではなく、次から次へと借金をしてしまいました。今や日本国家の借金は1000兆円とまで言われています。
合理的な意思決定を国会や国民はできないことを揶揄して「ハーヴェイロードの前提が崩れた」と言われています。

ケインズ理論の欠点を補う形で「新自由主義」と云はれる考え方がアメリカでは主流になっています。新自由主義についても、今後解説したいと思います。

まとめ

ケインズの唱えた積極的な政府の介入による景気のコントロールは、日本経済においても多大な影響を与えています。アベノミクスにおいても金融緩和と公共投資が進められているように現代の財政政策にも強い影響を与えている理論です。

アメリカにおいては新自由主義の考え方で近年は財政運用をしてきています。しかし新自由主義は、格差を拡大しており極端すぎる理論だということが次第にわかってきました。

新自由主義については下記で解説しています。

5分でわかるフリードマンの「資本主義と自由」- 新自由主義をわかりやすく解説

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