私たちが普段利用している日本円は、日本銀行という中央銀行が発行する日本銀行券です。入手するために人生のほとんどの時間を費やしている日本円ですが、正しい仕組みを理解している人は、あまり存在しません。
この記事では、通貨の歴史を紐解きながら、中央銀行の歴史を徹底解説します。
クリトピさん
紙幣の誕生
中央銀行が生まれる前に、紙幣の話をしなくてはいけません。
紙幣は中世のヨーロッパで生まれました。当時、財を築き上げた商人たちが、有り余る「金貨」を両替商に預ける代わりに、「預かり証」を受け取っていました。
商人たちは、普段は「金貨」で商売をしていましたから、取引する度に、この「預かり証」から「金貨」へ引き換えなくてはなりません。引き換えは非常に面倒だったため、次第に「預かり証」のみで取引を行うようになりました。この「預かり証」を通じた取引が「紙幣」の始まりでした。
中央銀行制度の誕生の歴史
預かり証での取引が活発に行われるようになると、両替商の金庫には一定の金貨が残るようになりました。両替商は、この金貨をお金を欲している人に貸し出し始めます。無料で貸し出すのでは、利益を得られませんから、貸出料として「利子」を取ることを考え出します。お金を貸す代わりに利子の返済を約束するという商売が始まります。これが銀行業の始まりです。
貸出先は不安定
当時、この貸し出し業=銀行業のビジネスは非常に不安定でした。なぜなら、貸付先の多くは商人たちだったため、取りっぱぐれることもしばしばでした。そこで銀行家たちは、最も安定的な貸し出し先に目をつけました。それは政府機関です。
貸出先の大手は政府機関
1690年、イギリス政府はフランス戦争での巨額の戦費に苦しんでいました。そこで、銀行家たちはイギリス政府に対して資金を貸し出すことを考えました。そして複数の銀行家が、協力して資金を持ち寄りイングランド銀行を設立しました。イングランド銀行は、政府に多額の資金を貸し出す代わりに、それと同額の紙幣(=預かり証)を発行できる権利を手に入れました。
後に、中央銀行制度と呼ばれるようになり、この時から紙幣を発行できる権利を持つのは中央銀行のみに制限されるようになっていきます。
中央銀行の貸し出しの担保
中央銀行が政府機関にお金を貸し出す理由は、安定的な担保があるためです。
安定的な担保とはなんでしょうか?私たちが借金をする際には、職業や収入、家などの担保を調べ融資額が決定します。中央銀行も同様に、政府機関に対して安定的担保がなくては貸し出すことは不可能です。
その担保は、「徴税権」です。政府機関は、国民から税金という形で資金を徴収しています。この税金を担保としてお金を貸し出します。
中央銀行の役目は利子のコントロール
中央銀行が担う役割とは一体なんなのでしょうか?
中央銀行のもっとも重要な役割は「利子のコントロール」です。政府機関に貸し出す際に、何%の利子を徴収するかを決定しています。何も難しいことはしていません。
利子が低ければ、お金をたくさん借りることができます。逆に利子が高ければお金をたくさん借りることができなくなります。とても簡単な理屈です。
お金をたくさん借りることができれば、お金をたくさん使うことができます。誰かの支出は、誰かの所得に繋がりますから景気が良くなります。
逆に、利子が高くなれば、お金を借りることを諦めますから、使えるお金が少なくなり支出が減ります。誰かの支出は、誰かの所得ですから景気が悪くなるのです。
このバランスを適切にコントロールすることで、景気を安定させるのが中央銀行の役目だと言われています。
なお、中央銀行の金融政策について詳しく知りたい方は下記のリンクで解説しています。
10分で分かる金融緩和・量的緩和 -メリットやデメリットをわかりやすく解説中央銀行は民間企業
中央銀行は、実は民間企業です。歴史を紐解けば両替商のカルテルから発展してきたのが中央銀行な訳ですから理解できるかと思います。貸し出しの担保は、国民の税金です。我々は中央銀行からの借金無くして生産活動を行うことができません。我々が普段利用している日本円も、日本銀行からの借金の預かり証なんです。
まとめ
私たちが当たり前に利用している日本円は、日本銀行が発行する借金といっても過言ではありません。なぜ日本円を発行するのに利子が必要なのでしょうか?中央銀行制度は400年以上の歴史があり根本的な仕組みは変わっていません。今こそ中央銀行制度そのものを見直す必要があるのかもしれません。
下記の記事で、「10分でわかる経済の仕組み」も記載しています。経済を理解すると、より中央銀行制度についても理解する事ができます。
10分でわかる経済の仕組み。最もわかりやすいお金の仕組みと本質