マクロ経済学とは?初心者向けに10分でわかりやすく解説|GDP・IS-LM分析・労働市場の基礎

マクロ経済学は、経済全体を大きな視点で分析する学問です。主な研究対象は、「財市場」「貨幣市場」「労働市場」の3つです。

この記事では、マクロ経済学の基本を10分でわかりやすく解説します。経済学の専門知識は必要ありません。

ちなみに、マクロ経済学はケインズ経済学を基礎とする学問です。ケインズ経済学については、下記の記事で詳しく解説しています。

ケインズの一般理論をわかりやすく解説|雇用・利子および貨幣の理論と財政政策の基本

経済学全体についてざっくり理解したい方は、下記の記事もおすすめです。全体像をつかむことで、この記事の理解も深まります。

経済学とは何か?歴史をわかりやすく解説| 古典経済学から近代経済学まで

マクロ経済学とは?

マクロ経済学とは、経済活動全体を集計して、その動きを分析する学問です。

マクロ経済学のイメージ

たとえば、私たちがよく耳にするGDP(国内総生産)は、国内で生み出された付加価値の合計を表します。このような経済全体の集計値を分析するのがマクロ経済学です。

一方で、個人や企業といった小さな単位の行動に注目するのがミクロ経済学です。

ミクロ経済学について知りたい方は、下記の記事で詳しく解説しています。

ミクロ経済学とは?初心者向けにわかりやすく解説|需要曲線・供給曲線の基

マクロ経済学で扱う3つの市場

マクロ経済学が主に扱う市場は、大きく3つあります。

マクロ経済学が扱う3つの市場
  1. 財市場:モノやサービスの生産・消費を扱う市場。GDPが代表的な指標
  2. 貨幣市場:貨幣や債券、利子率の動きを扱う市場
  3. 労働市場:労働の需要と供給、雇用や失業を扱う市場

以下では、この3つの市場について順番に見ていきます。

財市場

財市場とは、モノやサービスが生産・消費される市場のことです。

財市場のイメージ

財市場を表す代表的な指標がGDP(国内総生産)です。

GDPとは、国内で生産された付加価値の総和です。

たとえば、ある企業Aが鉄の材料を使って鉄板を作り、企業Bがその鉄板を使ってを作ったとします。このときGDPは、完成品の価格を単純に全部足すのではなく、各段階で新しく生み出された価値だけを合計します。

付加価値(GDP)=(鉄板の価格 − 材料費)+(車の価格 − 鉄板の価格)

つまり、GDPは「どれだけたくさん売れたか」ではなく、国内でどれだけ新しい価値が生み出されたかを表しています。

GDPと所得の関係

GDPが増えると、企業の売上や所得も増えやすくなるため、私たちの給料にも関係してきます。

一般に、景気の良し悪しはGDPの成長率で判断されます。だからGDPは、マクロ経済学で最も重要な指標のひとつです。

GDPについてさらに詳しく知りたい方は、下記の記事で解説しています。

GDPとは? 10分でわかりやすく解説 「名目」「実質」「一人当たり」って何?

三面等価の原則

GDPが重要なのは、「三面等価の原則」があるからです。

三面等価の原則とは、「生産」「支出」「分配」の3つは、最終的に同じ大きさになるという考え方です。

三面等価の原則とは?
  • 生産面= 国内で生み出された付加価値(GDP)
  • 支出面= モノやサービスに使われたお金
  • 分配面= 賃金や利潤、税金として分配されたお金

この3つは、最終的に等しくなります。

三面等価の原則

たとえば、生産が増えれば、その分だけ誰かが買っているはずです。そして売上が増えれば、企業から賃金や利潤として誰かに分配されます。

つまり、GDPの増加は、支出や所得の増加とつながっているわけです。

三面等価の原則の一般式

三面等価の原則は、次のような式で表せます。

三面等価の原則の一般式
  1. 生産面:Y(GDP)
  2. 支出面:C(消費)+I(投資)+G(政府支出)+(X(輸出)− M(輸入))
  3. 分配面:C(消費)+S(貯蓄)+T(税金)

少し複雑に見えますが、言いたいことは単純です。生産されたものは、誰かの支出になり、最終的には誰かの所得として分配されるということです。

有効需要の原理とは?

ここで重要になるのが「需要はどうやって決まるのか」という問題です。

古典経済学では、セイの法則という考え方がありました。これは「供給されたものはすべて需要される」という考え方です。

セイの法則
供給はそれ自ら需要を生み出すという古典派の考え方

しかし、現実には作ったものが必ず売れるわけではありません。そこでケインズは、需要が不足すれば景気が悪くなると考えました。これが有効需要の原理です。

需給均衡式

話を単純にするために、政府支出と海外貿易がない国を考えると、財市場の均衡は次のように表せます。

需給均衡式
Y(GDP)= C(消費)+ I(投資)

つまり、国内総生産は、消費と投資の合計で決まるということです。

消費を分解する

消費はさらに2つに分けて考えることができます。

  • C0(基礎消費):所得が減っても必要な最低限の消費
  • C1(限界消費性向):所得が増えたとき、そのうちどれだけ消費に回すかの割合

基礎消費のイメージ

限界消費性向のイメージ

消費の分解
C = C0 + C1 × Y

これを需給均衡式に代入すると、最終的に次の式になります。

需給均衡式の一般式
Y = 1 /(1 − C1)×(C0 + I)

これが、ケインズ派で有名な需要均衡式の一般式です。

乗数効果とは?

この式から導かれる有名な考え方が「乗数効果」です。

乗数効果の式
ΔY = 1 /(1 − C1)× ΔI

たとえば、政府が100億円の公共投資をしたとします。すると、その100億円は建設会社の売上になります。さらに、その会社は従業員の給料を増やし、従業員はそのお金を使います。その支出がまた誰かの所得になります。

このように、最初の投資以上にGDPを押し上げる効果が生まれるのが乗数効果です。

限界消費性向C1が高いほど、乗数効果も大きくなります。

乗数効果を直感的に理解する

乗数効果は、数式よりも流れで見るとわかりやすいです。

たとえば政府がダム建設に100億円支出したとします。その100億円は建設会社の売上になり、建設会社の従業員の給料やボーナスになります。給料が増えた人たちは、外食したり旅行したり買い物したりします。

すると、その支出がまた別の業界の売上となり、そこで働く人の所得を増やします。こうして支出が次々と連鎖していきます。

政府支出の例

ΔGDP = 100億円 + 100億円×C1 + 100億円×C1² + 100億円×C1³ ...

乗数効果の連鎖

ΔGDP = 1 /(1 − C1)×100億円

つまり、最初の100億円の支出が、それ以上のGDP増加を生むということです。

貨幣市場:需要

次に、マクロ経済学では貨幣市場も扱います。ここでは、お金や債券、利子率の関係を考えます。

ケインズ派の貨幣需要

ケインズは、貨幣需要には3つの動機があると考えました。

ケインズ派の貨幣需要の3つの動機
  1. 取引動機:日常の支払いに使うため
  2. 予備的動機:万一に備えて持っておくため
  3. 投機的動機:投資や投機のために持つため

流動性選好説

ケインズの有名な考え方が「流動性選好説」です。

これは、人はすぐ使えるお金、つまり流動性の高いものを好むという考え方です。現金はすぐに使えますが、債券はすぐには使えません。そのため、利子率との比較で、現金を持つか債券を持つかを判断します。

取引動機・予備的動機

取引動機と予備的動機は、所得が増えるほど大きくなります。所得が増えれば、日常的な支払いも増え、貯蓄したい気持ちも強まるからです。

投機的動機

投機的動機は、利子率と関係しています。

利子率が高ければ、銀行に預けておくだけでお金が増えるため、わざわざ危険な投資をしようとする動機は小さくなります。逆に利子率が低いと、投機的動機は大きくなります。

古典派の貨幣需要

一方、古典派はケインズのような投機的需要を重視しません。

古典派の貨幣需要
  1. 取引動機
  2. 予備的動機

また古典派は貨幣数量説を重視します。

貨幣数量説とは、貨幣需要は市場に出回る貨幣量で決まるという考え方です。ケインズ派が利子率も重視したのに対し、古典派は貨幣供給量そのものに注目しました。

貨幣市場:供給

貨幣の供給量は中央銀行がコントロールしています。ただし、実際に市場に出回るお金の量は、中央銀行が発行した紙幣そのものより多くなります。

その理由は、銀行の信用創造にあります。

銀行は、手元にある現金以上のお金を貸し出すことができます。

仮に銀行が持つ現金をd、支払準備率をrとすると、貸し出しを通じて市場に出回るお金はd / rまで膨らみます。

中央銀行は、紙幣の量と支払準備率を調整することで、貨幣供給量をコントロールしています。

これが一般にいう金融緩和金融引き締めの土台です。

詳しくは下記の記事で解説しています。

中央銀行の仕組みをわかりやすく解説|紙幣の誕生と歴史から学ぶお金の正体量的緩和(QE)を図解で解説|マネタリーベースとマネーストックの違い

IS-LM分析とは?

ここまで見てきた財市場と貨幣市場を、まとめて分析するのがIS-LM分析です。

  • IS曲線:財市場が均衡する「国民所得」と「利子率」の組み合わせ
  • LM曲線:貨幣市場が均衡する「国民所得」と「利子率」の組み合わせ

この2つを組み合わせることで、財市場と貨幣市場が同時に均衡する点を求めます。

IS-LM分析のグラフ

IS曲線は右下がりです。利子率が下がると、お金を借りやすくなり、投資が増え、GDPが増えるからです。

LM曲線は右上がりです。利子率が上がると、投機のために持っていた現金需要が減り、その分だけ取引需要が増えて国民所得が増えるからです。

この2本の曲線の交点が、財市場と貨幣市場が同時に均衡する点になります。

労働市場

最後に、労働市場を見ていきます。ここでも古典派とケインズ派で考え方が異なります。

古典派の労働市場

古典派は、労働市場では最終的に完全雇用が達成されると考えました。

古典派の労働市場

古典派の考えでは、賃金が高ければ働きたい人は増え、賃金が低ければ企業は多く雇います。この2つが一致するところで完全雇用が実現すると考えました。

つまり、古典派は賃金を十分下げれば失業はなくなると考えていたわけです。

ケインズ派の労働市場

しかしケインズは、大恐慌の現実を見て、それでは説明できないと考えました。

ケインズ派の労働市場

ケインズは、賃金は一定以下には下がりにくいと考えました。これを賃金の下方硬直性といいます。

たしかに、賃金がどこまでも下がるなら、誰も生活できなくなってしまいます。だから実際には、働きたくても働けない非自発的失業が起こりうるのです。

この考え方によって、「失業は本人の怠慢ではなく、経済全体の需要不足でも起こる」という認識が広まりました。

その結果、政府が財政政策や金融政策で景気を支えるべきだという考え方が強まっていきました。

マルクスの資本論をわかりやすく解説|剰余価値・資本蓄積・資本主義の問題点

マクロ経済学をさらに深く学ぶには?

ティモシー・テイラー (著), 池上 彰 (監訳), 高橋 璃子 (翻訳)

マクロ経済学をしっかり学ぶなら、『スタンフォード大学で一番人気の経済学入門 マクロ編』がおすすめです。

専門用語が多くなりがちなマクロ経済学を、かなり丁寧に解説してくれる一冊です。基礎から学びたい方には特に向いています。

まとめ

マクロ経済学は、経済全体の動きを分析する学問です。

  • 財市場ではGDPや消費・投資を扱う
  • 貨幣市場では貨幣需要や利子率を扱う
  • 労働市場では雇用や失業を扱う

また、ケインズ経済学は、需要不足や失業の問題に注目し、政府が積極的に景気を安定化させる役割を持つと考えました。

マクロ経済学を理解すると、ニュースで語られる景気対策、金融政策、GDP成長率といった話がかなり読みやすくなります。

なお、マクロ経済学と対になる「ミクロ経済学」については、下記の記事で解説しています。

ミクロ経済学とは?初心者向けにわかりやすく解説|需要曲線・供給曲線の基

2 COMMENTS

鬼嫁な名無しさん

突然のメールで失礼いたします。
とても分かり易い内容で勉強のためによく活用させて頂いております。

IS曲線の説明の箇所で
「利子率が低下すると、生産するためのお金を借りることができませんから、Y(生産=国民所得)が低下します。そのため右肩下がりになります。」

と、ありますが、利子率が低下するとお金を借りやすくなるので融資を受けることが増えて、生産するためのお金は世の中に出回るようになるのでは?と疑問に思いました。
IS曲線が右肩下がりになるのは、利子率が↓(下がる)となると、低い利子でお金が借りやすくなった為に融資が増えて、世の中に出回るお金が増え、つまり国民所得は↑(増える)となるので利子率と国民所得の増減が反比例し、右肩下がりになるのだと理解していました。
実際、rが下がる(=縦軸の下方に行く)とYは増える(=横軸の右方に動く)という線になっています。
私の理解が間違っていたら申し訳ありません。

返信する
crypto

見ていただいて大変嬉しいです!これからも精進します。

ご指摘ありがとうございます。その通り私の記載が誤っていました。こちら修正いたしました。

返信する

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください