10分で分かるマクロ経済学 | 初心者にも分かりやすく基礎や公式を解説

マクロ経済学とは、より大きな経済活動の動きを分析することで、どのような対策をすれば景気を安定させることができるのかを研究する学問です。

財市場、貨幣市場、労働市場の3つの市場をマクロな視点で分析することが、この学問の目的です。多くの枠組みがケインズ経済学を土台に展開されています。

下記のリンクで、ケインズの考え方についての基礎を理解しておくことをお勧めします。

5分でわかるケインズの雇用・利子および貨幣の一般理論 | ケインズ経済学の基礎

なお、複雑な数式が多くなりがちなマクロ経済学ですが、展開される理論自体は単純な例を挙げれば理解できるものです。この記事では、複雑な表現を避けて噛み砕いて説明します。

マクロ経済学とは?

マクロ経済学は、マクロ(大きい)経済の動きを分析する学問です。各個別の経済活動(購買や消費)の全体を集計した動きを分析する学問です。

例えば、我々がよく耳にするGDP(国内総生産)は、国内で生産された付加価値の全体の集計値です。このような生産の集計値を主に研究対象とするのが、「マクロ経済学」というわけです。

それと対極にあるのが「ミクロ経済学」です。より小さな経済活動「生産と消費」に着目します。

10分で分かるミクロ経済学 | 初心者にも分かりやすく基礎を解説

マクロ経済学で扱う3つの市場

マクロ経済学が対象とする代表的な市場は、大きく3つです。1つが「財市場」、2つ目が「貨幣市場」、3つ目が「労働市場」です。

マクロ経済学が扱う3つの市場
  1. 財市場:主にGDPを対象とする。生産、消費、分配がどのように行われるのかを考える
  2. 貨幣市場:貨幣や債券の流通に関して考える
  3. 労働市場:労働の需給について考える

これら3つの市場について、マクロ経済学で一般的になっている考え方について、これから解説していきます。

財市場

財市場とは、モノやサービスを生産する、また消費する市場のことです。一般的にはGDPを考えます。

GDP(国内総生産)とは、国内で生産される付加価値の総和です。例えば、ある企業Aが、鉄の材料を輸入して「鉄板を作った」、ある企業Bが、その鉄板を購入して「車を作った」とします。

GDPは付加価値の総和ですから、

付加価値(GDP) = (鉄板の価格 − 鉄板の材料費)+(車の価格 − 鉄板の価格)

となります。実際には鉄のみではありませんから、色々な生産物を作る事で付加価値が増えGDPが上昇していく事が理解できるかと思います。

このGDP(国内総生産)が増えるのは、生産物が増えるだけではありません。その分消費する量も増えます。消費する量が増えれば、企業は儲かるわけですから、所得が増えていくわけです。

つまり、GDPは給料に直結しますから、我々にとってはすごく重要な指標なんですね。よく景気が良い、景気が悪いと表現されますが、一般的にはGDPの成長率をもとに語られます。中国や新興国では8%前後、日本含めた先進国は2%程度です。

中国で働いている人は、毎年毎年、給料が上がっているように感じる一方で、日本などの先進国ではあまり変わらないと感じるのは、GDPの成長率が低いからということができます。そのくらいGDPはすごく大切な指標です。

三面等価の原則

GDPが上昇すると、賃金が上がると説明しましたが、その背景には「三面等価の原則」が存在します。

三面等価の原則とは、「生産面」、「支出面」、「分配面」が常に等しくなるという考え方です。「生産面」は商品の供給のことです。GDPがこれに当たります。もう一つが「支出面」で、消費量のことです。3つ目が「分配面」で賃金のことです。

三面等価の原則とは?
  • 生産面(供給)= 国内総生産(GDP)
  • 支出面(需要)= 国民が生産物を消費する量
  • 分配面    = 国民に分配される量、賃金や税金など

上記の3つが全て等しくなるという考え方を、三面等価の原則と呼ぶ。

この三面等価の原則は、難しいようで、ものすごく単純な理論です。

生産物が増えたら、その分消費が増えていきます。当たり前ですよね。企業が去年より2倍の付加価値を生み出した。その付加価値は必ず消費されているはずです。消費されているということは、企業の売り上げが上がるわけですから、賃金に還元されているはずだ、という理論に過ぎないんです。

三面等価の原則の一般式(公式)

三面等価の原則には、有名な一般式があります。数式を使っているのでややこしく見えますがかなり単純です。

三面等価の原則の一般式
  1. 生産面: GDP = Y(yield)
  2. 支出面: 消費(C)+ 投資(I) + 政府支出(G)+( 輸出(X) – 輸入(M))
  3. 分配面: 消費(C)+ 貯蓄(S) + 税金(T)

生産面は「Y」で表されます。

支出面は、「消費(C)」「投資(I)」「政府の支出(G)」に、「輸出(X)」から「輸入(M)」を引いたものとなっています。輸出すればお金が増えますのでプラス、逆に輸入するとお金が減るのでマイナスになります。

分配面は、「消費(C)」するのか、「貯金(S)」するのか、「税金(T)」として無くなるのかで表すことが可能です。

有効需要の原理とは?

国民の需要がどのようにして生まれるのか考えていきます。需要についての経済学的な考え方は、二つの考え方があります。一つが古典経済学における「セイの法則」です。

セイの法則とは、簡単にいうと「作ったものは全て売れる」という考え方です。つまり需要は供給自らが作り出すという考え方です。

セイの法則
供給されたもの全てが需要されるという考え方。古典経済学で採用される一般的な需要の考え方。

この考え方は、アダム・スミス、リカードをはじめとする古典経済学が提唱した考え方です。アダム・スミスの「国富論」について詳しく知りたい方は下記のリンクで解説しています。

5分で分かるアダムスミスの「国富論」 | 分かりやすく初心者向けに解説 10分で分かるリカードの経済学および課税の原理 | わかりやすく解説

しかし、直感的にはかなり無理のある論理だとわかります。作り出したからといって、売れないものは売れないですし、山のように商品が余っていますね。

そのような中で、ケインズが「有効需要の原理」という考え方を提唱しました。

需給均衡式:有効需要の原理

古典経済学は、供給そのものが需要になるという考え方でした。しかしケインズ派は、需要と供給が均衡する条件があるはずだと考えました。

ここでは、話を単純化するために、政府支出と海外貿易がない国を考えます。

すると上記の三面等価の原則より、生産はY(GDP)、支出は、消費(C)+ 投資(I)で表されます。これらは等式で結ぶことができるので下記の式が成立します。

需給均衡式
Y(GDP) = C(消費) + I(投資)

ここでさらに式を分解して考えていきます。

まず消費C(消費)ですが、所得の増減で変化しない消費を「C0」とします。この「C0」を基礎消費と言います。基礎消費とは生活必需品など、いくら給料が減ったとしても減らすことができない消費を「C0」という形で分類します。

また、賃金が増えた際に、どれだけ消費に回すのかという割合を「C1」とします。賃金が10万円増えた、10万円増えたので5万円くらい消費しても良いかと多くの人が考えれば、「C1」は0.5となります。この「C1」を「限界消費性向」と呼びます。

Cを「C0」、「C1」で分解すると下記のように表現することができます。

消費の分解
C = C0(基礎消費) + C1(限界消費性向)×Y(GDP=国民所得)
三面等価の原則より、生産面=分配面となることからC1×Yと置くことが可能

この式を需給均衡式に代入すると下記のように展開できます。

需給均衡式の一般化

Y(GDP)= C0(基礎消費) + C1(限界消費性向)×Y(GDP=国民所得) + I(投資)

Y(1 – C1)= C0 +I

Y = 1 / (1 – C1)×(C0 + I)

乗数効果を生む

需要均衡式の一般式
Y = 1 / (1 – C1)×(C0 + I)

という一般式からYが変化した場合、どのように変化するかを考えます。変化を表すΔを用いて定式化すると下記の通りとなります。

変化率を考える
ΔY = 1 / (1 – C1)×(ΔC0 + ΔI)

ΔYは、所得の変化を表します。所得が変化するとΔC0が変化し、ΔIも変化します。所得が増えたら、基礎消費も投資も増えるのではないかというのを式にしているだけですね。

そして、C1は限界消費性向なので変化しないと仮定します。またC0は、基礎消費なので所得の増減にかかわらず消費されるため0とします。

すると下記の通りの式となります。

乗数効果の定式化
ΔY = 1 / (1 – C1)× ΔI

つまり限界消費性向C1が0.5の場合は、投資効果が「1 / 0.5 =2」なので、「ΔY = 2 × ΔI」となり、投資効果が2倍になります。限界消費性向C1が0.9だった場合は、10倍の投資効果が得られます。

つまり、「適切に政府支出を含めた投資を増やしていけば、その投資以上に乗数効果が得られる」というケインズの有名な理論の裏付けとなっています。

貨幣市場:需要

マクロ経済学では、貨幣や債券、そして債券に伴う利子についてマクロな視点で考えます。古典学派とケインズ学派で貨幣への考え方にも大きな違いが見られますので解説していきます。

貨幣需要:ケインズ学派

ケインズ学派は貨幣需要は、「取引動機」「予備的動機」「投機的動機」の3つがあると主張します。

ケインズ派の貨幣の三つの需要
  1. 取引動機
  2. 予備的動機
  3. 投機的動機

取引動機は、取引するために必要な需要です。予備的動機は、何かのために備えて置くための動機です。投機的動機は、投機・投資をするための動機です。

ケインズの流動性選好説

流動性選好説とは、人は流動性(すぐに財と交換できるか)が高いものを選びやすいという理論です。

現金は流動性が高いですが、債券はすぐに現金化できません。つまり債券に利子がなければ、全ての人が現金を選びます。しかし実際には利子があるため、その利子の高さによってどちらを選ぶのか判断することになります。

取引動機と予備的動機

取引動機と予備的動機は、国民所得の増加関数(国民所得が増えれば、二つの需要が増える)となります。国民の所得が増えれば、たくさん貯蓄しようと思いますし、またたくさん商品を購入しよううとするわけです。

投機的動機

投機的動機は、利子率と深い関係があります。利子率が高ければ、銀行に預けていればお金が増えるので、投機的動機は小さくなります。投機的動機とは危険を冒してでも利益を上げようとする動機のことです。逆に利子が低ければ投機的動機が高まります。

つまり、利子率は投機的動機の減少関数となります。(利子率が高いほど、投機動機は小さくなる)

貨幣需要:古典派

古典派の貨幣需要は、ケインズ派の投機的需要を含みません。

古典派の貨幣の二つの需要
  1. 取引動機
  2. 予備的動機

また古典派は、「貨幣数量説」に基づいて貨幣の需要について考えます。貨幣数量説とは、貨幣の需要は世の中に出回っている貨幣の供給量で決定するという考え方です。供給される量が少なければ、貨幣の需要が高まり、供給量が多ければ、貨幣の需要が小さくなります。

ケインズ学派では利子率によって、貨幣の需要が変動すると書きましたが、古典派では考慮しません。あくまでマネーサプライに注目していると言えます。算出式として有名なのは「フィッシャーの交換方程式」と「ケンブリッジの現金残高方程式」です。興味のある方は、調べてみるとようでしょう。(長くなるのでこの記事では省きます)

貨幣市場:供給

貨幣の供給量は、中央銀行が行なっているわけですが、実際には中央銀行が発行する通貨以上の通貨が市場に出回っています。

その理由は、信用創造という銀行の仕組みにあります。中央銀行の仕組みについては下記のリンクで解説いています。

10分で分かる中央銀行の仕組み。中央銀行と紙幣の歴史

銀行は、手元にある現金以上の現金を貸し出すことができます。

仮に銀行の実際に所持している「現金をd」とし、「支払準備率をr」とすると、実際に貸し出されるお金は「d / r」となります。rは支払準備率で、最低限手元に持っておかなくてはいけない現金の割合で中央銀行が定めています。

中央銀行は、紙幣の発行数量を調整するとともに、支払準備率rを調整することで貨幣の供給量を調整します。中央銀行がコントロールできる、紙幣数量と支払準備率をハイパワードマネーと呼びます。

IS-LM分析

ここまで財市場と貨幣市場について見てきましたが、それらを二つ組み合わせて分析を行うのがIS-LM分析です。

IS曲線とは、「財市場」を均衡させる「国民所得」と「利子率」の組合せを表します。
LM曲線とは、「貨幣市場」を均衡させる「国民所得」と「利子率」の組合せを表します。

財市場と貨幣市場が同時に均衡する「国民所得」と「利子率」を算出し、財政政策・金融政策の効果を分析するためにIS-LM分析は用いられます。

グラフにすると下記の通りです。

青い線が財市場の「IS曲線」です。財市場はGDPの変化だと思ってください。利子率が低下すると、生産するためのお金を借りることができませんから、Y(生産=国民所得)が低下します。そのため右肩下がりになります。

赤い線は、貨幣市場の「LM曲線」です。利子率が上がると、銀行に預けておいたほうがお金が増えるので、投機のためにとっておいた現金の需要がなくなります。ここが非常にわかりにくいですが、投機的需要とは、投機(危険な覚悟で大きく儲ける)ための需要のことです。カジノや為替などが挙げられます。

銀行に預けておいたほうが安心だよね、となれば投機のための需要がなくなります。通貨供給は一定だと考えると、その需要が減った分は取引需要に回ります。そのため国民所得が増加する右肩上がりのグラフになります。

労働市場

労働市場の需要と供給のバランスからマクロで分析していきます。ここでも、古典派とケインズ派での考え方に違いがあります。

古典経済学の労働市場

古典経済学においては、必ず完全雇用が達成されるという前提に立っています。

このグラフは、賃金が高くなれば、みんな働きたいと思うので需要が上がる。逆に労働者を雇う側は、賃金が低いとたくさん雇えるので供給が増える。この二つが交わる点で完全雇用が実現されるという理論です。

かなり乱暴な理論ですが、アダムスミスをはじめとする古典派は、非自発的な失業はないという前提に立っています。労働賃金を極限まで下げていけば、必ず全員が雇用されると考えました。

しかしながら実際には、定期的に大恐慌が当時起きており完璧な理論でないことは自明でした。そこで現れたのが「ケインズ」と「マルクス」でした。マルクスは資本主義そのものを否定しましたが、ケインズは積極的に政府が介入することで資本主義は持続可能だと説きました。

10分でわかるマルクスの資本論 -初心者にもわかりやすく解説-

ケインズ派の労働市場

ケインズは、働きたくても働けない、飢え死にする人もいる大恐慌を目の当たりにして古典派とは異なる理論を打ち立てました。

労働需要というのは、一定の賃金以下には下がらないという状態にあると説きました。別の表現として、労働市場は「下方硬直的」であると言われています。

これも当たり前です。賃金が下がり続ける中で、これ以上下がったら生活もままならないというラインがある以上、どこかで打ち止めになります。

ケインズ以前の経済学では、非自発的失業などなくて、みんなが自発的に働くことをやめているだけであると考えていました。しかし、ケインズのこの理論によって、働きたくても働けないという状態があり得るのだという認識が広まり、積極的な金融政策と財政政策を行わなくてはいけないという動きに変わっていきます。

まとめ

マクロ経済学の概略についてまとめました。実際にはこの基礎的な考えをもとに、数式を変化させたり、財政政策や金融政策の影響分析などを行いますが今回の記事では、土台となるような基礎的な考え方をまとめました。

ケインズ経済学含むマクロ経済学は、政策をどのように行って景気を安定化させるのかといった「大きな政府」としての役割に対して多大な示唆を与えたと言えます。ニューディール政策などもその一例です。

しかしながら経済学は、少しずつ変化・適応しながら進化してきた学問です。批判的に見ていくことでよりよい社会の形が見えてくるかもしれません。

なお下記リンクにて、マクロ経済学と対をなす「ミクロ経済学」についても解説していますのでご覧いただければ幸いです。

10分で分かるミクロ経済学 | 初心者にも分かりやすく基礎を解説

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