私たちが暮らす日本や主要先進国は「資本主義」を採用しています。しかし、資本主義社会の本当の姿を理解している人は、意外と少ないのではないでしょうか。
この記事で解説するマルクスの『資本論』は、資本主義の本質を明らかにすると同時に、その問題点を鋭く指摘した本です。
現在、多くの国で経済成長が鈍化し、格差や独占などさまざまな問題が起きていますが、マルクスはその兆候を早くから見抜いていたとも言えます。
クリトピさん
社会の富は商品の集合体
マルクスの『資本論』は、次の有名な一文から始まります。
つまり、資本主義社会の富は商品の集まりなのだから、まず商品そのものを分析すれば、資本主義の仕組みが見えてくるはずだ、ということです。
私たちの身の回りには、コンビニやスーパーを見てもわかるように、無数の商品があります。『資本論』は、「そもそも商品とは何か?」という問いから、資本主義の構造に迫っていきます。

使用価値と交換価値
「商品とは何か?」という問いに対して、マルクスは商品には使用価値と交換価値の二つがあると考えました。
- 使用価値
商品を実際に使うことで得られる価値です。たとえば、服は着ることができる、パンは食べることができる、というような価値です。 - 交換価値
商品が他の商品と交換できる価値です。たとえば、古いスマホと新しいスマホは同じではありません。古いスマホに別の品物を足せば交換できるかもしれません。つまり商品には、見た目の違いの裏側に、比較・交換できる何らかの共通の価値があるはずだとマルクスは考えました。

すべての商品と交換できる貨幣の登場
商品には交換価値があると説明しました。
その中で、あらゆる商品と交換できる特別な存在が登場します。それが「貨幣(通貨)」です。
貨幣は腐りませんし、どんな商品とも交換できるため、交換の道具として非常に便利でした。

現代では、この貨幣は中央銀行が発行する仕組みになっています。中央銀行の仕組みについて詳しく知りたい方は、下記の記事で解説しています。
労働力の正体
たとえば、テレビを5万円で買ったとします。そのテレビは通常、買っただけで5万円以上の価値を生み出すわけではありません。
しかし、購入することで、それ以上の価値を生み出す特別な商品があります。それが「労働力」だとマルクスは考えました。
資本家は労働力を買います。たとえば、月給20万円で人を雇ったとしましょう。もし労働者が20万円分の価値しか生み出さなければ、会社には利益が残りません。つまり現実には、それ以上の価値を生み出しているわけです。
マルクスは、労働力だけが、買うことでそれ以上の価値を生み出す特別な商品だという点に注目しました。

剰余価値とは何か?
労働者は、受け取る賃金以上の価値を生み出していることになります。この、賃金を超えて生み出された価値を、マルクスは剰余価値と呼びました。
資本家は、この剰余価値をできるだけ大きくすることを目的に行動すると、マルクスは考えました。

お金からお金を生む運動
もともと人々は、商品を売ってお金を得て、そのお金で別の商品を買っていました。つまり商品→お金→商品という流れです。
しかし資本家は、お金→商品→お金'という流れで行動します。
つまり、お金で労働力や原材料を買い、商品を作り、それを売って、元のお金より多いお金を手に入れます。
この運動を繰り返すことで、資本家はどんどん資本を蓄積していくのです。

二種類の剰余価値
マルクスは、剰余価値には二つの種類があると説明しました。
一つ目が絶対的剰余価値、二つ目が相対的剰余価値です。
絶対的剰余価値とは、単純に労働時間を延ばすことで生み出される剰余価値です。
つまり、より長く働かせれば、その分だけ剰余価値を増やせます。ただし、働かせすぎて労働者が倒れてしまっては困るため、最低限、再び働ける状態まで回復するだけの休みや生活は必要になります。これを労働力の再生産と考えます。
相対的剰余価値とは、生産性を上げることで生活必需品を安くし、労働者を再生産するためのコストを下げることで生み出される剰余価値です。
たとえば、1日の生活費が1万円だったとして、生産性向上によって生活費が5千円で済むようになれば、より低い賃金でも労働力を維持できることになります。
- 絶対的剰余価値
労働時間を増やすことで高めることができる - 相対的剰余価値
生産性を高め、生活費を下げることで、労働力の再生産コストを引き下げて高めることができる
避けられない大規模化
労働力から得られる剰余価値を最大化しようとすると、多くの労働者を一か所に集めて働かせたほうが効率的だと、マルクスは考えました。
仮に10人が別々の場所で10時間働けば、単純には100時間分の労働です。しかし、同じ場所で働けば、それ以上の価値が生まれる可能性があります。
これは、上手い人から学べたり、分業が進んだり、競争や協力が生まれたりするからです。マルクスは、人間が社会的な存在である以上、この大規模化による効率化は避けられないと考えました。

反旗をひるがえす労働者
大規模化が進み、多くの労働者が同じ場所で働くようになると、資本家に対して労働者が対抗し始めるとマルクスは考えました。
資本家は、できるだけ長く、安く働いてもらいたい。一方で、労働者はできるだけ良い条件で働きたい。この対立は避けられません。
小さな会社なら抑え込めても、大規模化して労働者が集団化すると、争いは表面化しやすくなります。

日本でも、大企業になるほど労働組合との対立や交渉が目立つのは、この構造と無関係ではありません。
資本蓄積は独占を生む
労働者が生み出した剰余価値は、基本的には資本家の側に蓄積されていきます。なぜそうなるのでしょうか。
仮に剰余価値をそのまま労働者へ十分に還元したとします。すると、その分だけ商品の価格は上がります。そうなると、競合他社との価格競争で不利になります。
また、自由競争の中で剰余価値の最大化を追求していくと、企業はどんどん大規模化し、最終的には最も効率よく生産できる少数の企業だけが残る、独占の傾向が強まるとマルクスは考えました。

資本蓄積の概念について、より詳しく知りたい方は下記の記事でも掘り下げています。
資本家と労働者の対立
剰余価値を高めるために、大規模化し、生産性を上げ、自由競争を突き詰めていった先にあるのは独占です。
独占が進むと、労働者は悪い条件でも働かざるを得なくなります。なぜなら、他に働き口がなくなるからです。
そうなれば、労働者は貧しいままで、資本家はますます資本を蓄積することになります。マルクスは、この矛盾を「弔いの鐘」と表現し、資本主義の終わりを予告しました。
まとめ
マルクスの『資本論』について、エッセンスだけを整理しました。実は『資本論』の原題は Das Kapital、つまり単に「資本」です。マルクスは、資本とは何か、その正体はどのようなものかを徹底して解明しようとしたのです。
最後にマルクスは、資本主義の先に「弔いの鐘」が鳴ると述べました。では、現在の社会に照らし合わせるとどうでしょうか。
GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)のような巨大企業が世界経済で圧倒的な力を持つ状況は、独占の傾向を強く感じさせます。剰余価値の効率的な回収が、巨大企業への集中を生み、資本家と労働者の格差は広がり続けています。
そう考えると、マルクスは現代の資本主義の一部をかなり早い段階で見抜いていたとも言えます。なお、マルクスの思想はエンゲルスとともに「マルクス主義」として体系化されました。下記の記事で解説しています。
一方で、資本論によって資本主義を批判したマルクスに対し、経済学者ケインズは、政府が適切に介入すれば景気の安定は可能だと考えました。ケインズの『雇用・利子および貨幣の一般理論』については下記で解説しています。
おすすめの本:より深く理解したい方は
上の記事では、『資本論』をより深く理解するためのおすすめ書籍を紹介しています。この記事は要点中心ですが、さらに理解を深めたい方はぜひ参考にしてください。
ちなみに、この記事は下記の『高校生からわかる「資本論」』も参考にしています。『資本論』をもっと具体例つきで理解したい方にはとてもおすすめです。個人的にも、資本論の入門書として非常にわかりやすい一冊だと思います。




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