10分で分かるリカードの経済学および課税の原理 | わかりやすく解説

近代経済学の父と呼ばれる「リカード」ですが、彼の著書「経済学および課税の原理」の考え方とはどのようなものなのでしょうか?

自由貿易の基礎ともなった比較優位の考え方が記載されたこの著書の考え方を10分で分かるように解説します。なお、経済の前提知識はいりません。

リカードとは?

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リカードは17人兄弟の3番目としてロンドンに生まれました。彼の家はポルトガル系のユダヤ人の家系です。

14歳の時に、ロンドン証券取引所で父親の仕事を手伝う形で加わりました。リカードは、21歳の時に駆け落ちし、それがきっかけで両親とは絶縁します。そのような状況の中で、株式仲介人として独立をしました。

リカードの株式仲介人としての手腕は鋭く、大金を稼いだ後、42歳で仕事を引退します。その後に、経済学および課税の原理を発表しました。

経済学および課税の原理

経済学および課税の原理は、下記の序文で始まります。

 大地の生産物――つまり労働と機械と資本とを結合して使用することによって、地表からとり出されるすべての物は、社会の三階級の間で、すなわち土地の所有者と、その耕作に必要な資財つまり資本の所有者と、その勤労によって土地を耕作する労働者との間で分けられる。

非常にややこしい言い方ですが、言いたいことは非常に単純です。「土地」「機械や工具などの資本」「労働」の3つによって大地の生産物、つまり生産物や商品が作られますよ、ということです。

小麦を例にしたら簡単です。小麦を植える土地と、農機具と、植える労働が揃うことで生産していますよね。

その後、リカードはこう続きます、

だが、社会の異なる段階においては、大地の全生産物のうち、地代・利潤・賃金という名称でこの三階級のそれぞれに割りあてられる割合は、きわめて大きく異なるだろう。

先ほど説明した、土地、資本、労働はそれぞれ、土地所有者、資本家、労働者という所有する人がいます。もしある土地で生産して利益が出た。その利益を、その三者で分配しようとした時に、その割合は均等ではないよ、と説明してるんです。

ちなみに、土地所有の利益は「地代」、資本家の利益は「利潤」、労働者の利益は「賃金」と定義します。地代、利潤、賃金の分配は均等ではないよね、と書かれているんですね。

  • 地代: 土地所有者の利益
  • 利潤: 資本所有者の利益
  • 賃金: 労働者の利益

そしてこう続きます。

なぜなら、それは主として、土壌の実際の肥沃度、資本の蓄積と人口の多少、および農業で用いられる熟練と創意と用具とに依存しているからである。

この分配を規定する諸法則を確定することが経済学の主要問題である。

分配が均等にならない原因についてリカードは述べます。1つ目は、土壌が豊かかどうかです。土壌が豊かならば、土地所有者がたくさん儲かるはずです。2つ目が、資本の蓄積です。たくさんの農機具を蓄積してる資本家はより多く利益が分配されますね。3つ目が人口と熟練度です。人口が少なければ、労働者の価値が上がりますし、熟練度が高ければ多くの報酬が得られるはずです。

これらの三者の分配は、何が決めているのか?最適な分配方法は何なのか?どうしたらみんなが豊かになるのか?リカードはここから理論をスタートさせます。

投下労働価値説

まずはリカードは、労働について考えました。

投下労働価値説とは、投下した労働という行為によって、交換価値が生まれるという考え方です。この考えは、マルクスにも引き継がれています。

交換価値とは、例えばりんごとメロンを交換するとして、りんご1個とメロン1個の交換は嫌だけど、りんご10個とメロン1個なら交換するかもしれません。つまり、生産物は必ずイコールで結べる、つまり交換できる価値があるという考え方です。

では、この交換価値の違いはなぜ生まれるのかリカードは考えました。

先ほどの例だと、りんご10個とメロン1個の交換が成り立つので、りんごの10倍の交換価値がメロンにあるわけです。この価値の違いは、投下された労働に依存するとリカードは考えました。

メロンはりんごの10倍手間暇がかかるから、価値が高いのだという考えが投下労働価値説です。

差額地代論

次にリカードは、土地について考えました。土地代は、その土地での収穫量と、最も収穫量が少ない痩せた土地の収穫量の差が土地代になると説きました。

土地代とは?
その土地で生産した時の収益ー 最も収穫量が少ない痩せた土地の収益 = 土地代

少しわかりにくいですが、論理は簡単です。最も痩せた土地で作られた小麦の価格が最も高い値段になりますね。なぜなら、収穫量が少なく非効率に作っているからです。そう考えると、生産物は、最も痩せた土地で作られた価格が市場の基準になるはずだと考えました。

ここで疑問が浮かびます。効率的に作られた小麦は、安く売れるわけですから、高い価格が基準になるのはおかしいじゃないかという疑問です。

しかし、生産者はこう考えるだろうとリカードは言います。非効率に作られた値段の高い小麦が市場に溢れてる、じゃああえて安くする必要はないよね、値段は高いままにして差額を利益にしようと考える。そのため、最も痩せた土地の生産価格が基準になるんだと説きました。

話を戻すと、この文章が理解できるかと思います。その土地での収穫量と、最も収穫量が少ない痩せた土地の収穫量の差が土地代になる。つまり、土地代とは、効率的に生産できて多く稼げるのだから、その分高くていいだろうと地主がお金を取る、つまり土地代は、土地によって増える収益とイコールなのだとリカードは説きました。

MEMO
複雑に見えますが、当たり前のことを言っています。現代でも家賃は、駅前の方が高いですよね。なぜ高いのかといえば、その分効率よく集客できるからです。その効率が家賃価格になっているのだと単に言っているだけなんです。

賃金生存費説

次は3つの要素のうちの賃金についてです。

賃金生存費説とは、労働賃金は、生命維持に必要な(生存に必要な)最低額が支払われるように収斂するという考え方です。

労働者に、資本家は賃金を支払うのですが、その賃金は、明日も元気に戻ってきて、また働いてくれる最低限の賃金になるのだという考えです。マルクスは労働の再生産費が賃金だと説明しており、この考え方を引き継いでいます。

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すごくたくさん働かせて、明日疲れ果ててきてくれなければ、労働者は生産できなくなります。資本家は、それでは困るので、衣食住が最低限保証される給料のみが払われると考えました。

収穫逓減の法則

この法則も有名です。ある土地で小麦を1人で生産して5kgの小麦が取れた。2人にしたら10kgとれた、では100人にしたら500kgの小麦が取れるのかといえばそうではありません。土地は限られていますからどこかで効率が悪くなり収穫は逓減していきます。(逓減とは徐々に減っていくという意味です)

社会主義の国、中国ではかつて限られた土地に大量の小麦を植えた、そうしたら収穫量が増えるだろうと考え、大躍進政策の一つとして「密植」を打ち出した。その結果、生産物が全く育たなくなってしまい大飢饉を迎えたのですね。

自由貿易擁護論: 資本家の利潤

リカードは自由貿易を推奨しています。

まずリカードは資本家の利潤率の上昇は、賃金の低下なくしては成立しないと説きます。賃金が低いと、コストを低く抑えて生産できるので利潤率が上昇しますね。ここで資本家の利潤について踏み込みます。

では賃金を低くするにはどうしたら良いのか?それは自由貿易だと説きます。
例えば、他国で小麦をものすごく安く作っている国から商品を輸入する。そうすると、世の中の小麦が安くなります。賃金生存費説で説明したように、労働者は、世の中の商品が安くなれば、少ない賃金でも生活できるようになります。つまり賃金が少なくて済むので、利潤率を上げることができると考えたわけです。

この現象は、アメリカのウォルマートでも起きたんです。ウォルマートの商品はすごく安いし、なんでも売っている。ウォルマートの従業員は賃金がすごく安いけれど、ウォルマートで買い物したら生活できてしまうわけです。

自由貿易について、最初に提唱したのはアダム・スミスですね。近代経済学の基礎を作りました。

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その後、形を変えながらこの基礎的な考え方は「フリードマン」の新自由主義まで受け継がれています。

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比較生産費説

比較生産費説とは、それぞれの国が他国と比較して得意な生産物に特化して生産して、貿易を行った方が豊かになるという考え方です。

例えばイギリスでは布を労働者100人で200生産できる一方で、ワインは100しか生産できない。スペインは布は50しか生産できないけれど、ワインは90生産できるとします。

イギリスは布もワインも両方スペインより生産量が多いのです。これを絶対優位と言います。
比較優位とは、比較的優位なものに特化すると全体として豊かになるという考えです。スペインはイギリスと比較して、布生産は勝ち目がないけれど、ワインであればそれなりに太刀打ちできそうです。スペインはワインに絞って生産しました。

お互いが得意な生産物に絞った結果、全体として140も生産が多くなっています。まるで数字のマジックのようですが、得意なものを作って貿易したら全体として豊かになるとリカードは説きました。

まとめ:リカードは何を言いたかったのか

序文でリカードは、生産物は、資本、土地、労働が揃って行われると説きました。

生産物の利益が、資本家の利潤、土地所有者の土地代、労働者の賃金にどのように配分されるのか解明し、最終的には自由貿易を推奨しています。また比較優位の生産物を作り貿易をすることによって全体として豊かになるのではないかと説きます。

現代でもTPPなど、自由貿易を推奨する背景にはリカードの考え方があります。しかし、リカードは近代経済学が前提とする合理的経済人を前提としています。

実際には、得意なものだけ生産した結果、弱い立場に追いやられる国もありますし、技術的に進歩しにくい分野に特化すると経済的恩恵を受けにくい場合もあります。リカードの考えは、非常に参考になりますが、完全ではないという視点で考えてみることをお勧めします。

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