5分で分かるアダムスミスの「国富論」 | 分かりやすく初心者向けに解説

近代経済学の父と呼ばれる「アダムスミス」の名著「国富論」について、初心者向けに分かりやすく解説します。

アダムスミスの考え方は、近代経済学の「ミクロ経済学」「マクロ経済学」の基礎となっています。古い書籍ですが改めて読み返すと、新たな発見や新鮮さがあるかと思います。

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アダムスミスとは?

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アダムスミスは、1723年にスコットランドで生まれました。当時のスコットランドは、イングランドに併合されてイギリスの一部となっていました。

イギリスは我々は一つの国だと思っていますが、スコットランドの人からしたら無理やり併合されたという意識が強いんです。いまだにスコットランドの人はイギリスのなかで独立意識が強いです。

そのような環境の中で、アダムスミスはロンドンで学び、その後スコットランドの名門「グラスゴー大学」で経済学ではなく「道徳哲学」の先生をしていました。道徳哲学の先生をしていたアダムスミスの、最初に発表した書籍は「道徳感情論」というものでした。この書籍は非常に評判で、後の「国富論」に繋がっていくわけです。

道徳感情論:最初の書籍

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道徳哲学の先生をしながら彼の書いた「道徳感情論」は、人間の「同感」という感情に注目しました。

アダムスミスは、人間はみんな「自分のことだけ」を考えて利己的に行動しているけれど、なぜ社会秩序が保たれているのだろうと考えました。もしみんなが本当に利己的に生きていたら、窃盗や暴力が横行してしまいます。しかし今の世の中はそうなっていないのは「同感」という感情が人間にはあるのではないかと結論づけました。

「同感」とは、社会的に認められるか?共感できるか?ということです。社会は、「この程度だったら大丈夫だろう」「この程度なら許してくれるだろう」という感情によって、まとまっているのだと考えました。

同感とは?
社会的に人々が認めるかどうか。「同感」という感情によって、我々は利己的に行動はしているけれども社会はまとまっている。

この「道徳感情論」は「国富論」の基礎となっています。つまり人間は「利己的」に生産活動をしているのになぜ社会としてまとまっているのか?という疑問が彼の経済研究のスタートとなったのです。

国富論:諸国民の富

彼は「道徳感情論」の後に、「国富論」を発表しました。日本語訳の別名は「諸国民の富」などがあります。

実は英語名の表記は非常に長く「An Inquiry into the Nature and Causes of the Wealth of Nations」です。直訳すると「諸国民の富の性質と諸原因についての一研究」となります。

つまり世の中にある富とは何なのか?その富はどのようにして増えていくのか?その研究をしてみようという書籍でした。

社会の富とは何か?

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アダムスミスは、富の研究から始めました。アダムスミスは「富」を下記の通りに定義しました。

アダムスミスの定義する富
富とは国民の労働で生産される必需品と便益品

ここでいう必需品とは、生活必需品のことです。食べ物や衣服や住居がなければ人は生活することができません。いわば衣食住に関わる商品のことです。便益品とは、やや贅沢をする商品のことです。例えば書籍だったり鉛筆だったりをイメージしていただければと思います。

そのような商品=消費財が社会の富だと考えました。

重商主義は国を貧しくする

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アダムスミスが「国富論」を執筆した当時は、国の豊かさは、どれだけ「金・銀・貴金属」を持っているかどうかだったのです。

つまり、国内で製品を作って外国に輸出して「金・銀・貴金属」を獲得することが国を豊かにするけれども、外国から小麦を輸入して「金・銀・貴金属」で支払いをしたら国が貧しくなるという考え方です。

重商主義とは
国内の「金・銀・貴金属」の量が国の豊かさである。輸入によって国は豊かになり、輸出によって国が貧しくなるという考え方。

普通に考えれば、重商主義は馬鹿げた考え方に見えますが、現代でも同じような考え方をしてしまうことがあります。例えば、貿易赤字や黒字という考え方がありますね。貿易黒字だと良い、つまりたくさん外国に輸出してお金がたくさん入ってくる。これが国民を豊かにするのだと考えがちです。しかしアダムスミスは、この考え方を否定したわけです。

輸出奨励金制度は国を貧しくする

またアダムスミスは「輸出奨励金制度」は国を貧しくすると批判しています。

輸出奨励金制度とは、特定の輸出品に国が補助金を出して、輸出しやすくする制度のことです。アダムスミスは、海外で売れないような競争力が弱い商品に、補助金を出してしまうことになるので、富の無駄遣いだと考えました。

より良い商品を作ろうと努力しなくても、海外で売れてしまうわけですから、どんどん競争力が失われていくわけです。結果的には国の富を減らして貧しくなると「輸出奨励金制度」を批判しました。

分業することで生産性が高まる

アダムスミスは、富を増やす方法は分業であると説明しました。

アダムスミスは針の製造を例にして解説しています。例えば針を一人で作るには、針金を切って、穴を開けて、先を尖らせて、と作業していては丸一日かかります。

しかし、「針金を切る人」「穴を開ける人」「先を尖らせる人」と分業して作れば、1日で多くの針を作ることができるわけです。

今となっては当たり前の考え方ですが、「役割分担をして分業することによって生産性が高まるよ」とアダムスミスは説きました。分業こそが富を増やす方法だと考えたわけです。

分業は利己心によって成立する

では分業はどのように成立しているのでしょうか。みんなが「さあ一緒に作りましょう」と息を合わせて協力して作っているわけではありません。

「針を切る人」「穴を開ける人」「先を尖らせる人」全ての人が、利己的にお金を稼ごうとしているからです。全員が自分のためにお金を増やそうとすると、結果的に分業が成立するとアダムスミスは説きました。

彼の著書「道徳感情論」では人々が「利己的」に行動しているのに、社会がまとまっているのは「同感」という感情があるからだと説きました。この考え方をさらに昇華して、利己心によって分業が生まれ生産性が高まっている、世の中が良くなっているのだと考えました。

モノの値段も利己心で成立する

モノの値段についても利己心で決まるのだとアダムスミスは説明します。

例えば、近所の果物屋さんが「りんご」を200円で売っていたとします。しかし、それでは全然売れなかった。よくよく調べてみると、隣町の果物屋さんでは同じ「りんご」を180円で売っていた。これではよくないと考えて、慌てて150円にしました。めでたく売ることができたとします。

この八百屋さんは、果たしてお客さんのことを考えて、お客さんのために値下げを行ったのでしょうか?違います。果物屋さんは「りんご」が売れないと利益が出ないから安売りしただけです。つまり自分が稼ぎたいから利己心によって値段を下げたわけです。

つまり、モノの値段も利己心によって、自然と決まっていくはずだと考えたわけです。

見えざる手

アダムスミスは、利己心によって個人が利益を追求していった結果、社会的分業体制になっていき、見えざる手によって価格が調整され社会がうまくいくと考えました。

「神の見えざる手」という言葉が有名ですが、アダムスミスは「神の見えざる手」とは一言も言っていません。「見えざる手」によって社会がうまくいくとの表現にとどまっています。

3つの国の役割

アダムスミスは「自由放任にマーケットに任せれば良いのだ」と考えた人と捉えがちですが実は違います。

国は自由放任にするだけではなく、3つの役割を担うべきだと説明しました。一つが「国防」です。他国に攻め込まれてマーケットが破壊されては困ります。二つ目が「司法行政」です。犯罪が横行してマーケットが成立しなくなるからです。三つ目が「公共施設の整備」です。みんなが使う道路などは国が作るべきです。

担うべき国の役割
  1. 国防
  2. 司法行政
  3. 公共施設の整備

まとめ

アダムスミスの考え方は近代経済学の基礎となっています。皆さんご存知の「需要曲線」と「供給曲線」が交わったところに価格が収斂すると言う考え方がありますが、アダムスミスの「見えざる手」をもとに理論が作られています。ミクロ経済学、マクロ経済学へと発展していきます。

アダムスミスの考え方は、近年ノーベル経済学賞を受賞したフリードマンの「新自由主義」の考え方と近い部分があります。

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かなり昔の書籍ですが、現代まで受け継がれる先進的な考え方だったのですね。なお、この考え方をもとに近代経済学が発展する一方で、その考え方を否定する考え方も生まれました。それはマルクスの資本論です。

10分でわかるマルクスの資本論 -初心者にもわかりやすく解説-

経済学の考え方は、色々な考え方を行ったり来たりしながら発展を遂げてきて現在に至っているということです。正解のない学問なんです。

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