インフレとデフレの違いをわかりやすく解説 – 発生原因や経済・金利への影響も –

インフレーション(インフレ)とデフレーション(デフレ)は、ニュースなどでよく耳にする言葉ですが、きちんと理解している人は少ないです。

この記事では、インフレとデフレについて誰でもわかるように「図解」していきます。この記事を読めば、下記のことを理解することができます。

  • インフレとデフレとは何か?
  • インフレとデフレの発生原因
  • インフレとデフレの経済への影響
  • インフレとデフレの金利との関係 

インフレとデフレとは何か? 違いは?

インフレとは、モノやサービスの価格が上昇することです。

逆に、デフレは、モノやサービスの価格が下落することです。

モノは、例えばスーパーやコンビニの商品や、高いものであれば車や住宅のことです。サービスは、例えば旅行に行く時の電車賃や航空チケット代、ジムの会員費などです。

つまり、インフレとは、買い物や旅行の費用が上昇している状態です。逆にデフレとは、買い物や旅行の費用が下落している状態です。

インフレとデフレへの経済への影響

ここで1つの疑問が浮かびます。

その疑問は、デフレはモノやサービスの値段がどんどん下がって、色々買えるようになるのだから「良いことじゃないか?」ということです。

しかし、デフレは経済にとって悪影響です。詳しく解説していきます。

デフレスパイラル 経済の悪循環

例えば、住宅や車の値段が毎年10%下がっていくようなデフレ状態を想定します。その状態で人々は車や住宅を購入するのでしょうか?

多くの人は、来年もっと値段が下がるのであれば、来年まで待とうと思うはずです。つまり「買い控え」が起こります。みんなが買い控えをすれば当然経済が停滞します。

なぜでしょうか? それは、誰かの消費(購入)は、誰かの所得(給料)だからです。

例えば、住宅メーカーで、住宅が売れなければ、その販売員の給料が減ります。給料が減れば、その販売員は、贅沢を我慢して、外食を控えたりするかもしれません。そうなれば、レストランの売り上げも減り、そこの従業員の給与も減り...といった形で、経済の悪循環が生まれるわけです。

これをデフレスパイラルと呼び、日本はバブルの崩壊後、およそ10年間悩まされてきました。失われた10年とも言われていますよね。

このように、デフレはモノの値段が下がるだけの、単純な問題のように思われがちですが、このスパイラルが続けば深刻な問題を引き起こしかねません。過去の大恐慌は深刻なデフレの長期化によって引き起こされました。

世界恐慌の原因と発生メカニズムを分かりやすく解説 – 影響や各国の対策も解説 –

適度なインフレは経済の好循環を起こす

では逆に、毎年モノの値段が数%上がるインフレの状態を考えます。

住宅価格が毎年のように数%上がっている状態です。そうなれば、多くの人が「今のうちに買っておこう」と思うわけです。この適度なインフレは、経済の好循環を生み出します。

例えば住宅メーカーで、住宅がたくさん売れたら、その販売員の給料が増えます。給料が増えれば、その販売員は、レストランで少し奮発して食事をしたりしますから、そのレストランの売り上げも増えます。そうなれば、そこの従業員の給与が増えて...と行った具合です。

つまり、インフレは経済の好循環にとって重要な要素です。しかし、過度にインフレしすぎると、深刻な問題を引き起こします。

高いインフレ率はバブルを引き起こす

インフレ率、つまり物価の上昇率は毎年2%程度が望ましいとされています。適度に経済を活性化させるからです。

もし、インフレ率がそれを上回る場合、「バブル」となるリスクがあります。

例えば、極端な例で言えば、毎年住宅価格が2倍(200%UP)していたとします。そうなれば、住宅を欲しくない人も、住宅を買うかもしれません。元手がない人は、サラ金から借金をしてでも住宅に手を出すかもしれません。そうなると、実態以上に景気が拡大することとなります。日本のバブルも不動産価格が急上昇したことで引き起こされました。

バブルは実態以上の景気の拡大を意味しますが、簡単に言うと、本来の用途や目的を外れて、購入に走る人が増えることです。家は別にいらないけど、値段が上がるなら買っておこうというような心理が蔓延している状態です。

ハイパーインフレーション 深刻なインフレ

インフレの問題が深刻になると、ハイパーインフレーションを引き起こします。ハイパーインフレとは急激な物価上昇です。

例えば、昨日はお弁当が500円で買えていたのに、今日は1,500円に、明日は10,000万円にとなっている状態です。こうなれば、国内経済が崩壊し、大パニックになります。

過去、アフリカのジンバブエで起こり、ジンバブエドルはハイパーインフレの代名詞となりました。

パン一つ買うのに大量の紙幣が必要でした。上の画像のように、ちょっとした買い物にも大量の紙幣が必要になりました。当然、正常な経済活動が行えるわけがありません。

モノの値段が上がり続ける、これはつまり、通貨の価値が下落していることを意味します。

上の図のような状態になればもはや経済は成立しません。あなたの給料も、あなたの貯金も、全て価値が1/5です。そんな国にいれますか?政府や中央銀行は信頼を失い、内政が崩壊し、最悪の場合は戦争にすらなりかねません。

つまり、インフレとデフレのコントロールは国家の安定の最優先課題とも言えるのです。

ハイパーインフレがいかに深刻な問題か下記のリンクで詳しく解説しています。過去起きたハイパーインフレの歴史を解説しています。

ハイパーインフレの原因をわかりやすく解説 – 歴史や対策を10分で解説

インフレとデフレの発生原因

では、インフレとデフレはどのように発生するのでしょうか? ここから少し難しくなっていきますが、丁寧に解説します。

ミクロ経済学の知識を一部使用するので、より詳しく知りたい方は下記のリンクの記事を理解することをお勧めします。

10分でわかるミクロ経済学 – 需要曲線や供給曲線をわかりやすく解説

まず、インフレやデフレを決定づける要因はいくつか存在します。要因は下記の3つです。

  1. 需要変動
  2. 供給変動
  3. 貨幣量の変動

順番に解説していきます。

. 需要変動

まず、需要が変動することで、物価変動(インフレ・デフレ)は引き起こされます。欲しいと思う人が多ければ、価格が上昇(インフレ)します。その逆が起これば、デフレとなります。

上の画像は需要曲線と供給曲線です。需要が増えれば、需要曲線が上方にシフトして価格が引き上げられます。デマンドプルインフレとも呼ばれます。

. 供給変動

供給が変化することでも、インフレ・デフレが引き起こされます。供給量が減れば、それだけ希少価値が高まりますから値段が上がります。

. 貨幣量の変動

貨幣の量が変動することでも、物価変動が起こります。中央銀行が、市場に出回るお金の量を増やせば、それだけお金の価値が減るので、相対的にモノの値段が上がり、インフレが引き起こされます。

中央銀行が市場に出回るお金の量を増やすことは、金融緩和や量的緩和(QE)と呼ばれています。詳しくは下記のリンクで詳しく解説しています。

10分で分かる金融緩和・量的緩和 -メリットやデメリットをわかりやすく解説

インフレとデフレの金利との関係

では、インフレやデフレは、需要と供給そして貨幣量で決まることはわかりましたが、政府や中央銀行はいかにしてそれらをコントロールしているのでしょうか?

人々の経済の営みをコントロールすることは可能なのでしょうか?ここを理解するには、マクロ経済学の知識が使えます。下記で詳しく解説しています。

10分でわかるマクロ経済学 – 財市場、貨幣市場、労働市場をわかりやすく解説

政府と中央銀行は代表的には下記を実施してインフレをコントロールしています。

  1. 中央銀行による政策金利の引き下げ
  2. 中央銀行による国債の購入
  3. 政府による公共事業
  4. 政府による税率や制度の調整 

. 中央銀行による政策金利の引き下げ

中央銀行は「政策金利」を引き下げることで、「需要」を高めようとします。金利を下げることで、人々はお金を借りやすくなりますから、そのお金で様々なものを購入するようになり需要が増加します。

たとえば、車のローンや住宅ローンが、低金利で組めるようになります。そうなれば、多くの人が借金をしやすくなり、様々なものが売れ出します。

借金がしやすくなると、なぜ経済が活性化するのかというと、借金は世の中の消費の大部分を占めているからです。アメリカで出回っている現金は3兆ドルですが、借金(クレジット)は50兆ドルです。

借金をして購入するモノの方が圧倒的に多いわけです。これだけ、金利は経済に大きな影響を与えるわけですね。

. 中央銀行による国債の購入

中央銀行は、国債を購入することで、世の中に出回るお金の量をコントロールしています。貨幣量を増やすことで、インフレするようにします。

市中銀行が保有する国債を買い取り、現金を引き渡すことで、銀行が様々な人に融資できるように促します。結果的に世の中の貨幣量が増えるので、インフレを引き起こすことができます。

❶, ❷で説明した「中央銀行」の政策については、下記のリンクで詳しく解説しています。

10分で分かる中央銀行の仕組み。中央銀行と紙幣の歴史

. 政府による公共事業

政府は公共事業をおこない、需要を喚起します。たとえば、ダムを建設したり、橋を作ったりすることです。

そうすれば、そこで働く労働者に給与が与えられますから、労働者はレストランで食事をしたり物を買ったりすることになります。つまり、その分の需要が増えることになります。

実際にアメリカは大恐慌時代に「ニューディール政策」という大規模な公共事業を行い経済を立て直しましたこの政策は、ケインズ経済学を参考に実施されました。ケインズ経済学を詳しく知りたい方は下記のリンクで解説しています。

5分でわかるケインズの雇用・利子および貨幣の一般理論 | ケインズ経済学の基礎

政府による税率や制度の調整

政府は、インフレが行き過ぎると、税率や制度を調整して、加熱した経済を落ち着かせようとします。

場当たり的に行うことは、少ないですが、日本でもバブル時には、不動産価格のインフレ率の明確に定め、落ち着かせようとしました。(結果的に失敗でしたが)

どちらかというと、長期にわたり税率や制度をコントロールすることで、継続的に需要を喚起し、供給量を維持するために行われます。関税などは、供給をコントロールできる手段ですね。

まとめ

インフレとデフレについてまとめました。単純にはモノの値段の変動なのですが、その影響はとても甚大だということを理解できたかと思います。

デフレになれば、経済は停滞しますし、行き過ぎたインフレは、バブルやハイパーインフレを引き起こします。

政府や中央銀行は、説明したようにインフレ要素とデフレ要素をうまくコントロールしながら、経済の安定化に努めているわけです。

我々はもちろんそれを監視する立場にありますから、しっかりと各制度や方針を見極めて判断できることが望ましいです。これから日本はどうなっていくのか、政府や中央銀行の動向を見直してみてはいかがでしょうか?

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