5分でわかるリバタリアニズム – 批判やリベラリズム、ネオリベラリズムとの違い

リバタリアリズムは、あまり聞き慣れない言葉かも知れませんが、重要な政治思想です。

この記事では、曖昧になりがちな「リバタリアリズム」を、わかりやすく解説します。

また、よく混同される「自由主義(リベラリズム)」や「新自由主義(ネオリベラリズム)」との違いについても、図を用いながら解説していきます。またリバタリアニズムに対する代表的な批判についても解説します。

リバタリアニズムとは?

リバタリアニズムとは、個人の自由経済の自由の両方を重視する政治思想・政治哲学です。

個人の自由とは、自らの「身体的権利」や「私的所有権」を侵されるべきではないという立場です。

例えば政府による「徴兵」や「強制的な労働」は身体的な権利を侵すものとして否定します。また、所有する土地や建物などの財産を政府が徴収することも否定します。

経済の自由とは、市場は自由に任せておけば良いという考え方です。

この考えの代表的な人物は「アダム・スミス」です。政府がマーケットに介入するのではなく、自由放任で競争に任せておけば全てうまくいくと考えました。詳しくは下記のリンクで解説しています。

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つまり「リバタリアニズム」は、究極的には、政府による市民への介入の全てを否定しています。無政府状態を理想状態として、国家や政府の存在を否定します。

しかし、暴力や収奪、詐欺など「私的財産」を侵害する行為については、強制力を利用しても構わないとしています。

自由主義(リベラリズム)との違いは?

リバタリアニズムと自由主義(リベラリズム)は、全く異なる政治思想です。詳しくは下記で解説しています。

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自由主義(リベラリズム)は、歴史とともに定義を拡大してきたため、その本質を捉えにくいです。しかし、現代における自由主義の定義は下記の通りです。近代自由主義とも呼ばれています。

政府が適切に介入することによって、人々の自由を保障する政治思想

なぜ、自由主義が政府の介入を許すのか?と思われるでしょう。

もともと自由主義は、政府が介入すべきでないという考え方でした。しかし、マーケットに任せきりでは貧困や飢餓の問題が解決できませんでした。人々の自由を保障すべき「自由主義」なのに、食べ物にも困るほどの状況では、かえって自由を制限しているのではないか?という考え方が主流になりました。

そこで、経済学者のケインズを始めとして、適切に政府が介入することで、人々の自由を保障しようという考えに「自由主義」が拡張されました。ケインズについては下記のリンクで詳しく解説しています。

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新自由主義(ネオリベラリズム)との違いは?

リバタリアニズムとネオリベラリズム(新自由主義)は、密接に関わっています。

先ほども説明したようにリバタリアニズムは個人の自由経済の自由の両方を重視する政治思想・政治哲学です。ネオリベラリズム(新自由主義)は、リバタリアニズムの経済の自由を保障する、経済学的な立場です。

フリードマンという人物によって提唱され、ノーベル経済学賞を受賞しています。ネオリベラリズム(新自由主義)は、簡単にいうと「政府が介入せずに市場に任せておくのが、経済にとって1番だ」という考え方です。

詳しくは下記のリンクで解説していますが、ネオリベラリズム(新自由主義)は、リバタリアニズムを支える経済学ということです。

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リバタリアニズム・リベラリズム・ネオリベラリズムの違い

これまで説明した通りリバタリアニズム、リベラリズム(自由主義)、ネオリベラリズム(新自由主義)は明確な違いがあります。まとめると下記の通りです。

  • リバタリアニズム
    「個人の自由」と「経済の自由」を重視する政治思想・政治哲学
  • リベラリズム(自由主義)
    現代におけるリベラリズム(自由主義)は、近代自由主義とも呼ばれ、政府が適切に介入することによって、人々の自由を拡大することを肯定する政治思想・政治哲学。ケインズという経済学者によって推し進められた。
  • ネオリベラリズム(新自由主義)
    マーケット(市場)には、政府は極力介入せずに、自由放任に任せておけば、全てうまくいくという経済学・経済思想。フリードマンによって提唱されノーベル経済学賞を受賞している。リバタリアニズムを支える経済学。

2つのリバタリアニズム

リバタリアニズムは、2種類の異なる根拠によって発展してきました。政治学者ロックの自然権から派生したリバタリアニズムと、功利主義から発展したリバタリアニズムの2種類存在します。

両方の思想に違いはなく、先ほど説明した通りですが、そこに至る根拠が異なります。

ロックの思想が元となった「自然権的リバタリアン」

自然権的リバタリアンは、ホッブスやジョン・ロックが提唱した「自然権」をもとにしています。自然権について詳しくはホッブスの著書「リヴァイアサン」のなかに書かれています。

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人間は生まれながらの、自然状態において他者から犯されるべきでない権利を持っていると考えます。この自然権の考えを発展させたリバタリアニズムが「自然権的リバタリアン」です。

これら民主主義の発展の歴史を知ると、より理解が深まると思います。

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功利主義から生まれた「帰結主義的リバタリアン」

帰結主義的リバタリアンは、功利主義という考えから発展しました。

功利主義とは、政治制度などの社会的な望ましさは、その結果として生じる「効用(満足度)」によって決定するという考え方です。つまり、帰納主義的リバタリアンは、相互の権利を一切犯さない状態の社会が効用が最大化するのだから、結果としてリバタリアニズムが正しいという考えが根拠になっています。

リバタリアニズムへの批判

リバタリアニズムは、個人の自由な権利を保障する素晴らしい思想に思えますが、批判も存在します。その批判は、リバタリアニズムの自由の過剰な拡大は、逆に自由を阻害しているのではないか?というものです。

先ほど説明したように、経済の自由を保障する「新自由主義(ネオリベラリズム)」を適用したアメリカは、巨大な格差を生み出し、多くの貧困層であふれています。詳しくは下記のリンクで解説しています。

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政府がマーケットをコントロールしないと、弱肉強食の世界となってしまい、自由競争に敗れた敗者は「自由を剥奪」されることになります。これでは本末転倒です。

実は、この問題はリバタリアニズムの問題でもあり「資本主義」が抱える欠点だとも言えます

まとめ

リバタリアニズムについて解説しました。

リバタリアニズムは、人々の自由を過剰なまでに保障すべきであるという政治制度・政治哲学です。しかし新自由主義を適用して、壮大な社会実験を行ったアメリカは、経済的な弱者を生み出しました。

結局のところ、自由を拡大するつもりが、多くの人々の自由を阻害することになっては本末転倒です。リバタリアニズムは、極端な考え方ではありますが、そこから学べないわけではありません。また、全く政府が存在しない世界が実現しないのは「資本主義」をベースとした経済体制が存在するからかもしれません。ぜひ頭を空っぽにしてこの思想の持つべき理想を考えてみるのも良いでしょう。

 

 

 

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