社会主義と共産主義の定義は非常に曖昧で、同じ意味のように使われることもあれば、明確に区別されることもあります。
その理由は、この二つの概念が歴史の中で何度も意味を変えながら使われてきたからです。この記事では、歴史的な流れも踏まえながら、社会主義と共産主義の違いをわかりやすく解説します。
社会主義とは何か?
まず、社会主義とは何でしょうか。
社会主義と一口に言っても、さまざまな定義や潮流があり、厳密に「これが社会主義だ」と言い切るのは簡単ではありません。
しかし、現在もっとも一般的な整理をすると、次のように定義できます。
資本主義の弊害に反対し、より平等で公正な社会を目指す運動や思想
資本主義の弊害とは何か?
社会主義とは、まず「資本主義の弊害」に反対する思想です。
では、資本主義の弊害とは何でしょうか。
この問題を最も体系的に論じたのがカール・マルクスです。代表作は『資本論』で、名前を聞いたことがある方も多いでしょう。
マルクスは『資本論』の中で、資本主義の欠点を構造的に説明しました。下記の記事を読むと、より理解が深まると思います。
要点だけ言えば、資本主義社会では「資本家」と「労働者」の格差が拡大し、対立が深まっていくと考えたのです。
資本家とは、資本を持ち、それを使って労働者を雇い、さらに利益を増やす人々のことです。マルクスは、資本家はどんどん豊かになる一方で、労働者は貧しいまま取り残されると考えました。
今では極端に聞こえるかもしれませんが、当時のヨーロッパでは、不況や失業、生活不安が広がっており、自由な資本主義には限界があるのではないかという空気が強かったのです。

こうした資本主義の弊害を乗り越えるために登場したのが、社会主義だと考えるとわかりやすいでしょう。
社会主義の定義は幅広い
つまり、社会主義とは、資本主義が生み出す不平等や搾取を解決しようとする思想全般を指します。
そのため、社会主義にはかなり幅広い立場が含まれます。例えば、次のようなものも社会主義の流れの中に入ります。
- 社会民主主義
北欧諸国に見られるような高福祉国家の考え方。富裕層への課税を強め、子ども手当や高齢者支援などを通じて、最低限の生活を社会全体で保障しようとする。 - 計画経済
必要なものを必要なだけ生産し、国民へ平等に配分しようとする考え方。資本主義の不平等を抑えるために構想された。 - 無政府主義(アナーキズム)
国家や政府そのものが不要だと考える立場。支配と被支配の関係そのものを否定し、平等な関係を目指す。ただし、同じアナーキズムでも、社会主義的なものと個人主義的なものがあり、意味は一つではない。
共産主義とは何か?
共産主義は、社会主義の中に含まれる一つの思想です。

多くの記事では、「社会主義をさらに推し進めたものが共産主義」と説明されますが、これは少し雑な整理です。共産主義は、社会主義の一類型と考えるほうが正確です。
共産主義は、次のように定義できます。
共産主義は、生産手段や資本・財産の社会的共有と管理を目指す思想・体制
要するに、
- 工場や土地、財産は個人ではなく社会全体で共有する
- 生産されたものも、みんなに平等に分配する
という考え方です。
旧ソ連などは、こうした共産主義国家の代表例としてよく挙げられます。家や食料の分配まで国家が大きく管理し、人々に平等な生活を強く求めました。
ただし、現実の共産主義国家の多くは、強権的・全体主義的な方向へ進み、最終的には崩壊していきました。
詳しくは下記の記事で解説しています。
社会主義と共産主義の違い
ここまで読むと、社会主義と共産主義の違いはかなり見えてきたと思います。改めて整理すると、次の通りです。
つまり、共産主義は社会主義思想の中に含まれる一つの類型です。
社会主義と共産主義の歴史的な推移
では、なぜ社会主義と共産主義はここまで定義が曖昧なのでしょうか。
それは、この二つの概念が歴史の中で何度も意味を変えながら使われてきたからです。
大まかな流れを追うと、次のように整理できます。
1. 社会主義=共産主義の時代
先ほど説明した通り、社会主義はマルクスによって強く理論化されました。そしてその思想を実現する方法として、共産主義が前面に出たため、長い間「社会主義=共産主義」のように理解される時代が続きました。

この時代には、「生産手段や資本・財産の社会的共有と管理を目指す共産主義」によって、理想社会を実現しようとする発想が主流でした。
2. 社会主義=科学の時代
その後、社会主義はマルクスやエンゲルスによってさらに体系化され、「思想」から「科学」へと変化していきます。これが、のちに「マルクス主義」と呼ばれる流れです。
社会主義が一つの体系的理論になると、その実現方法も多様になっていきます。社会民主主義のように、共産主義とは異なる形で平等を目指す動きも強まっていきました。
こうして、共産主義と社会主義の違いが少しずつはっきりしてきます。

3. 社会民主主義と共産主義の対立
社会民主主義と共産主義は、現実の政治の中で強く対立するようになります。
社会民主主義は、資本主義を完全には否定せず、福祉国家や再分配によって平等を実現しようとします。一方、共産主義は、生産手段の共有や計画経済をより強く目指します。
この段階になると、社会主義と共産主義は政治的にも別々の勢力として扱われるようになります。

4. 共産主義の社会民主主義化
旧ソ連の崩壊によって、古典的な共産主義体制が大きく後退すると、共産主義もまた変化し始めます。
共産主義を掲げながら、部分的に市場経済や自由経済を取り入れる国も増えました。ここまでくると、社会主義と共産主義の違いは再び曖昧になってきます。
現代では、国や政党、文脈によってこの二つの言葉の使い方がかなり異なるため、定義が曖昧に見えるのです。

まとめ
社会主義と共産主義についてまとめました。改めて整理すると、次の通りです。
- 社会主義は、資本主義の弊害に反対し、より平等で公正な社会を目指す運動や思想
- 共産主義は、生産手段や資本・財産の社会的共有と管理を目指す思想・体制
- 共産主義は、社会主義思想の中に含まれる一つの類型
- ただし、歴史的な変遷を見ると、両者の違いは時代によって曖昧になってきている


