5分でわかるルソーの「社会契約論」- わかりやすく自然権や一般意志を解説

ジャン=ジャック・ルソーは、18世紀に活躍したフランスの政治哲学者です。

彼の著書「社会契約論」は、民主主義の基礎を作ったといっても過言ではありません。この記事では、ルソーの社会契約論を5分で解説します。なお前提知識はいりません。

ちなみに民主主義の歴史の大きな流れの中に、ルソーは存在しています。下記のリンクを読むと社会契約論の歴史的な位置づけを理解できます。

10分で分かる民主主義 – わかりやすく歴史や日本でいつから始まったのかを解説

ジャン=ジャック・ルソーとは?

ジャン=ジャック・ルソーは、フランスの政治哲学者であり、作曲家でもあります。

「なぜ作曲家?」と思われるかもしれませんが、18世紀は学問の領域は非常に曖昧で、色んなことを研究する学者が結構いたんですね。ルソーも、はじめは作曲技法や理論を研究する学者としてのスタートしましたが、徐々に政治哲学へ関心が移っていきました。

本当に彼の人生は波乱万丈で、作曲家ならではの恋多き人生なわけですが、この記事ではその辺りは割愛します。

恋愛も彼の価値観に大きな影響を与えたことは間違い無いのですが、特に大きな影響を与えたのが当時のパリの現状です。市民は重税に苦しみ、街はゴミや汚物で溢れ、市民の多くは満足とは程遠い生活を送っていました。

ルソーは、その状況を目の当たりにして「より良い政治の形」を晩年にかけて模索することとなります。そして、名著「社会契約論」が生まれました。

しかし、社会契約論の刊行によってルソーは危険思想を持つ人物として迫害されることになります。この本は特権階級を否定するものだったため、権力者たちから目をつけられ最終的には亡命することとなりました。

ルソーの社会契約論とは

社会契約論は、1762年にパリで発表されました。ルソーが50歳の時です。ヴェネチアでフランス大使の秘書官として働きながら執筆を行いました。

時代背景としては、ホッブスやロックといった人物が登場し始めていた時期です。彼らもルソーと同様、民主主義の基礎となるような理論を提唱しています。それぞれ共通する点も多いので、比較してみるのも良いでしょう。

10分でわかるホッブスの「リヴァイアサン」 – 思想をわかりやすく解説5分でわかるジョン・ロックの「統治二論」要約。自然状態や所有権も解説

自然状態:人間の本性

ルソーは、政治を考える上で、まず人間の本性(本能)について考えました。理想的な政治形態は、人間の本性(本能)に従うべきだと考えたんですね。

しかし、人間の本性(本能)は、今の社会に規定されています。「何をしたいか?」とか「何をしてはいけないのか?」というのは社会が規定してますよね。例えば、みなさんは「仕事はしなければならない」と思っていますが、これも社会があるからこそです。

そこでルソーは「自然状態」を考えます。自然状態とは、人間同士が一切関わりを持たない、孤立状態のことです。人間が社会を形成する以前の「原始的な状態」を想像してもらえれば良いでしょう。

この状態の時に、人間はどうなるのだろうか?と考えました。ルソーは「自分の欲求を満たすためだけに行動する」と答えます。それはそうですよね。他者と全く関わりがないわけですから、自分の欲求を満たすためだけに行動するはずです。

社会契約:国家が生まれる

しかし、自然状態では、自分の欲求を満たすためだけに行動していれば良いですが、現実はそうはいきません。

自分の欲求のためだけに行動してしまったら、誰かの欲求を脅かすことになるからです。例えば、ある人が畑を耕していて、ようやく作物が実った、しかし別な人が、「自分の欲求に従って」その作物を横取りしたとしましょう。そうなると、その人の生存自体が脅かされることになります。

よって、自身の欲求を脅かされないように、個人同士で協力関係を結びます。ルソーは、この協力関係を社会契約と呼んでいます。そして、社会契約が広がるとやがて大きな国家が誕生するだろうと説きます。

つまり、国家とは、それぞれ個人の欲求を脅かされないための契約関係の一形態であるはずだと考えました。

一般意志:国家による統一された意思

国家は社会契約の形だとルソーは考えました。しかし、多くの市民で構成された契約関係など成立するわけはありません。その理由は、みんな自分に有利な契約を結びたいからです。

そこでルソーは、全員が「自らの意思」を国家に譲渡すれば良いと考えました。人々の意思の全てを国家に集約して、1つの単一な意思「一般意志」に従い国家を運営すべきとしました。

社会契約論は民主主義の原型

社会契約論は、市民の意思を全て譲渡することによって「一般意志」を形成して、それに従い国家を運営すべきと説きました。

まさにこの考えは民主主義の原型です。社会契約論では、市民の意思を譲渡してるのだから、その譲渡先である国家は、市民によって運営すべきだと説きました。

特に社会契約論では、「直接民主制」を推奨しています。一般意志は市民の意思の集合なのだから、直接民主制にすべきと結論付けています。

しかし、現在では直接民主制に対しては多くの批判があります。しかし、制度はどうあれ、国民の政治参加を推し進めたという点で意味があります。実際に、社会契約論によって、市民革命へと繋がっていきます。

ちなみに現在主流となっている「議会制民主主義(= 間接民主制)」について詳しくは下記のリンクで解説しています。直接民主制よりも優れている理由を理解できます。

10分でわかる議会制民主主義 – わかりやすく利点や問題点を解説

まとめ

社会契約論についてまとめると下記の通りです。

  • 人間は「自然状態」では、自分の利益のみを追求する
  • 自分の利益のみを追求する本能に全ての人が従うと、自分の生存すら危ぶまれる
  • そのため人間同士は社会契約を結ぶが、利害の調整は困難
  • よって自らの意思を国家に譲渡して「一般意志」に従うべきとする
  • 選挙は直接民主制が理想とするが、様々な問題も存在する 

社会契約論は、現代の民主主義の始まりです。ここから市民革命へとつながり近代社会へと歩みを進め始めます。社会契約論は歴史的にもとても重要なエッセンスが詰まっています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください