ミルトン・フリードマンは「資本主義と自由」という本の中で、「
この記事では、彼の著書「資本主義と自由」を、
経済学全体についてざっくりと理解したい方は下記のリンクで解説しています。経済学を俯瞰することで、よりこの記事の理解が深まります。
わかりやすい経済学 – 古典経済学から近代経済学まで10分でざっくり解説ミルトンフリードマンとは?
ミルトン・フリードマンは、アメリカの経済学者で「新自由主義」
「新自由主義」とは、「政府が余計な介入をせず、
「新」自由主義ではなく、自由主義という考えも存在します。
つまり、新自由主義は、この自由主義の考えを、
もう一人自由主義的な考えで有名な経済学者として、
ちなみに、
フリードマンのシカゴ学派とは? リバタリアニズムの思想
フリードマンはユダヤ人であり非常に貧しい家庭で育ちました。
そのような環境の中で、彼は独力で大学を飛び級し、遂には教授にまで上り詰めました。彼はシカゴ大学でシカゴ学派と呼ばれる経済学を発展させます。
シカゴ学派の根底にある考え方は「リバタリアニズム」という哲学思想です。哲学とは、簡単に言うと「物事の捉え方、考え方」を考える学問です。
リバタリアニズムは下記の思想のことを言います。
より詳しく知りたい方は下記のリンクで解説しています。
5分でわかるリバタリアニズム – 批判やリベラリズム、ネオリベラリズムとの違いリバタリアニズムは、政府が何かを禁止したとしても、悪は消えることがないと考えます。
例えば、麻薬を禁止したとしても、どこかで誰かが裏で必ず作って大儲けをするでしょう。それなら、禁止になんてせずに、全部自由にやらせたらいいのではないか?という極端な哲学思想です。
実は仮想通貨=クリプトカレンシー(暗号通貨)も、リバタリアニズム的思想で作られています。皆さんが使っている法定通貨も日本銀行が発行した日本銀行券です。ビットコインは、利子率をコントロールされた通貨から自由になりたいという思想が現れています。
中央銀行の仕組みについては以下リンクで解説していますので参考にしていただければと思います。
10分で分かる中央銀行の仕組み。中央銀行と紙幣の歴史新自由主義とは何か?
新自由主義は、リバタリアニズムの考え方が根底にあります。
フリードマンは、人々が徹底的に自由であるために、政府は2つの原則を守るべきだと言っています。
- 第1原則 国防
他国から攻撃された時に、政府はその攻撃から国民を守ること。
つまり、外国から攻められることは、国民の自由の迫害なので、政府は守らなくてはならないと説きました。 - 第2原則 小さな政府
政府がやらなくてはいけない政策や制度がある場合は、より小さな組織で行いなさい、という原則です。国よりは県、県よりは市といったように、政策を下へ下へと流し行いなさいという考えです。
その理由は、国単位で何か政策をすると国民はそれに従いたくなくても、国を出るわけにはいきませんから、従わざるを得ません。しかし、市の単位で政策を行えば、別の市に移動すれば良いだけです。
国民の自由を徹底的に守るためにこのようなことを説きました。
この原則どこかで見覚えがあります。そうアダムスミスの考え方にかなり近いのです。アダムスミスは国の役割は「国防」「司法行政」「公共施設の整備」のみで十分で、あとはマーケットに任せれば問題ないという考え方でした。市場に委ねて、国の介入を最低限行えば、「見えざる手」によって最適化されるのだという考えです。
5分でわかるアダム・スミスの国富論(諸国民の富)- わかりやすく要約小麦は誰が作ったのか?
フリードマンは著書「資本主義と自由」の中で、面白い例えを書いています。
小麦の生産を考えた時に、小麦を生産したのが黒人なのか、白人なのか、アジア人なのか関係なしに小麦を購入する。
つまり、アメリカでは黒人差別があるけれど、自由なマーケットにおいては、黒人にも仕事があるし、人々が興味があるのは美味しい小麦で、美味しく作られたパンである。そのパンが売れるのは、誰が作ったかなど関係なく、そのパンが美味しいからだ。市場経済に任せれば差別などなくなるのだ。
自由主義は差別をなくすほど、徹底的に平等なんだと説明しました。
フリードマンが唱えた政府が行うべきでないこと
フリードマンが政府が行うべきでないと提唱した14の項目があります。この項目を見ると、いかに極端な自由を求めた考え方だということがわかります。
2. 輸入関税または輸出制限
3. 農産物の作付面積制限や原油の生産割当てなどの産出規制
4. 家賃統制
5. 法定の最低賃金や価格上限
6. 細部にわたる産業規制
7. 連邦通信委員会によるラジオとテレビの規制
8. 現行の社会保障制度、とくに老齢・退職年金制度
9. 事業・職業免許制度
10. いわゆる公営住宅および住宅建設を奨励するための補助金制度
11. 平時の徴兵制
12. 国立公園
13. 営利目的での郵便事業の法的禁止
14. 公有公営の有料道路
事業・免許制度すら廃止すべきだと言っています。例えば日本では、医師免許をもったい人のみ医療行為ができますが、フリードマンはそのような制度すらやめて市場に任せればいいと言っています。
つまり、医師免許など持っていなくても、医療行為が下手な人には人が集まらずに倒産してしまいます。逆に医者として神の手を持つような人は人気が集まります。そうやって市場に任せてしまえば免許などいらないとフリードマンは考えました。
新自由主義の問題点(光と影)
新自由主義は、自由であるという響きから国民主体の素晴らしい考え方のようにも見えます。しかし、政府の介入をなくし規制を緩和することで貧富の差が広がりました。
日本でも小泉政権の時に、新自由主義路線がとられました。そこで行われたのが労働力の規制緩和です。派遣労働者の仕組みが解禁されたために、不景気の際に大量に派遣切りが起き、強者の企業と弱者の労働者という構図を一層強めました。
アメリカにおいては、レーガン大統領の時に新自由主義路線の政策をとりました。その結果、巨大な格差が広がったと言われています。
自由放任主義にするということは、単純にいえば弱肉強食を良しとする考え方です。それを容認するということは、必然的に多くの敗者を生み、巨大な格差となって現れてしまいました。経済の活発化は確かにしましたが、新自由主義の行き過ぎは問題があるということを歴史から学ばなければいけないでしょう。
格差論が空前のヒット
格差論のベストセラーとなった、ピケティの「21世紀の資本」も行き過ぎた自由主義によって生まれた格差への国民への不満があるからこそ、ヒットしたのかもしれません。
下記にてピケティの21世紀の資本について解説しています。
【入門】10分でわかるピケティの21世紀の資本-わかりやすくグラフで要約-我々は資本主義の弱点を克服して新たな資本主義体制を模索しなければいけない時期に差し掛かっているのかもしれません。