ジニ係数とは、所得格差の大きさを表す代表的な指標です。
ニュースなどで「日本のジニ係数は上昇している」「格差が拡大している」といった言葉を耳にしたことがあるかもしれません。
しかし、ジニ係数が実際に何を意味し、どのように計算されるのかを理解している人は多くありません。
この記事では、ジニ係数の意味や計算方法をわかりやすく解説し、日本や世界各国のデータから何が読み取れるのかも整理します。
ジニ係数とは?
ジニ係数とは、ローレンツ曲線と均等分配線で囲まれた領域の面積を、均等分配線が作る面積で割った値です。
少し難しく聞こえますが、要するに「所得のばらつきがどれくらい大きいか」を数値で表したものです。
まずは、ローレンツ曲線と均等分配線が何を意味するのかから見ていきます。
ローレンツ曲線とは?
ローレンツ曲線とは、国民全体の所得を1.0としたときに、所得の低い人から順番に累積していった曲線のことです。
累積とは、たとえば所得が Aさん < Bさん < Cさん の順に並んでいる場合に、A → A+B → A+B+C と順番に足し上げていくことです。
ローレンツ曲線を図にすると、下のような形になります。

どの国でも、所得に差がある限り、このようにゆるやかに立ち上がる曲線になります。
なぜなら、資本主義経済では必ず所得差が存在するからです。アルバイトと医師では所得に大きな差がありますし、企業経営者と一般的な会社員でも差があります。そのため、全員が均等に所得を得ている社会ではない限り、ローレンツ曲線は45度線より下側に膨らんだ形になります。
均等分配線とは?
均等分配線とは、すべての人の所得が完全に等しい場合に描かれる45度の直線です。

たとえば、国民全体の所得合計が1000万円で、国民が10人いるとします。その全員が100万円ずつ受け取っているなら、完全に均等な社会です。このときのローレンツ曲線は、45度の直線になります。
もちろん現実にはこのような完全平等はほぼありませんが、「まったく格差がない状態」を表す基準線として、この均等分配線を使います。
ジニ係数の計算方法
ここまでを整理すると、ローレンツ曲線と均等分配線は次のように定義できます。
- ローレンツ曲線
国民全体の所得を1.0としたときに、所得の低い人から順に累積した曲線 - 均等分配線
すべての国民の所得が完全に等しい場合のローレンツ曲線。45度の直線になる
ジニ係数は、次の考え方で求められます。

(均等分配線が囲む面積(0.5)− ローレンツ曲線が囲む面積)÷ 均等分配線が囲む面積(0.5)
つまり、所得が均等に分配されているほどジニ係数は0に近づき、格差が大きいほど1.0に近づいていきます。
ちなみに、一般に社会騒乱多発ラインは0.4以上といわれています。格差が広がりすぎると、デモ、ストライキ、暴動、テロなどが起こりやすくなるためです。
なお、所得格差が極端に小さい社会は一般に「社会主義的」な経済に近く、一方で資本主義経済では能力や資産の違いによって所得差が生まれます。これらの違いについては、下記の記事でも詳しく解説しています。
資本主義と社会主義の違いとは?メリット・デメリットをわかりやすく解説
世界各国のジニ係数ランキング
世界各国のジニ係数については、OECDが統計データを公表しています。代表的な国々の比較をみると、格差の大きい国とそうでない国の傾向が見えてきます。

ランキング上位の国々には、いくつか共通点があります。
- アングロサクソン諸国、もしくはその影響を強く受けた国
- 比較的早い段階で経済自由化や市場競争を進めた国
アメリカ、イギリス、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアなどを指します。
こうした傾向は、トマ・ピケティの『21世紀の資本』でも指摘されています。
ピケティについては下記の記事で詳しく解説しています。
21世紀の資本をわかりやすく解説|ピケティの r > g と格差拡大の本質
アングロサクソン系の国々は、自由主義や市場原理を重視する傾向が強く、「市場に任せておけばよい」という発想が根強いため、結果として格差が広がりやすいと考えられます。
この流れを強く推し進めた代表的人物が、フリードマンです。彼の新自由主義的な政策は、アメリカやイギリスなどで大きな影響を与えました。
ミルトン・フリードマンの「資本主義と自由」とは?新自由主義をわかりやすく解説
また、アングロサクソン系国家の旧統治地域でも、格差が大きい傾向があります。たとえば南アフリカは、世界でも特に格差の大きい国として知られています。
さらに南米では、比較的早い段階で自由経済や市場開放を進めた国ほど、格差が広がった例も見られます。チリなどが典型例です。
グローバル化と格差拡大の関係については、内閣府の資料でも触れられています。
世界各国のジニ係数の推移
では、これらの国々のジニ係数は、時間の経過とともにどのように変化してきたのでしょうか。
下の図は、内閣府などで参照される各国のジニ係数の推移です。

ほぼすべての国で、長期的には格差が拡大傾向にあることが見て取れます。
日本のジニ係数の推移
日本のジニ係数の推移をみると、他国に比べれば比較的緩やかではあるものの、やはり上昇傾向にあります。

An Overview of Growing Income Inequalities in OECD Countries: Main Findings
つまり、日本はアメリカやイギリスほど急激ではないにせよ、格差が少しずつ拡大していることがわかります。
近年、「上級国民」などの言葉が広まりやすい背景には、こうした格差拡大に対する国民の不満やフラストレーションがあるとも考えられます。
ジニ係数の上昇は経済成長にどう影響するのか?
ジニ係数が上昇している、つまり格差が拡大していることはわかりました。
ここでよくある反論が、「格差は競争を生み、向上心を高めるから悪いことではない」という意見です。たしかに、一定の差が努力や挑戦のインセンティブになるという考え方もあります。
しかし、行き過ぎた格差は別問題です。実際にOECDのデータでは、過度な格差はむしろ経済成長に悪影響を与えることが示されています。

図のオレンジ色の部分が、不平等が経済成長に与えるマイナスの影響です。
多くの国で、貧困や教育機会の不足、能力開発の格差といった「機会の不平等」が、結果として経済全体の成長を抑えてしまっています。
まとめ
ジニ係数について、できるだけ噛み砕いて解説しました。
メディアでは、格差拡大を強い言葉で表現することがありますが、やはり実際のデータを確認することが大切です。
日本でも格差は拡大していますが、他国と比べればそのスピードは比較的緩やかで、一定の再分配機能が働いていることも読み取れます。
一方で、格差は必要悪だとする議論についても、行き過ぎた格差は経済成長そのものを阻害することがわかってきました。
つまり重要なのは、格差をゼロにすることではなく、格差を適切にコントロールしながら、挑戦の余地と社会の安定を両立させることです。
極端に格差をなくそうとすれば社会主義的になりすぎますし、逆に格差を放置しすぎれば社会不安が高まります。バランスが重要です。
下記の記事では、マルクスの『資本論』についても解説しています。
マルクスの資本論をわかりやすく解説|剰余価値・資本蓄積・資本主義の問題点
私たちは、適切な再分配政策を通じて経済を活性化し、全体最適を目指していく必要があります。


「最近でもフランスで格差の広がりから大規模なデモがありました。フランスもジニ係数が非常に高い国の一つなんです。」とありますが、フランスは日本よりジニ係数が低く、25位となっています。
ご指摘の通り、ジニ係数とフランスのデモの因果関係を結ぶのは不自然ですので
文章を削除しました。
こんにちは。
むちゃくちゃ、わかりやすいです。
図やグラフの入れ方とか、字のバランスとかも大変見やすいです。感動しました!
ありがとうございました。
ありがとうございます。さらに分かりやすくなるよう努めますのでなにか気づきましたらご連絡ください。