ヨーゼフ・アロイス・シュンペーターは、オーストリア出身の経済学者であり、イノベーション理論の先駆者として知られています。
経済発展は、企業者が断続的に行うイノベーション(技術革新)によってもたらされるという理論を構築しました。とくに『経済発展の理論』では、イノベーションが経済を大きく変える仕組みについて鋭い洞察を示しています。まるでインターネット革命やiPhoneの登場を予見していたかのようだとも言われるほどです。
この記事では、シュンペーターの『経済発展の理論』を、できるだけわかりやすく解説します。原文は非常に難解ですが、要点を絞って整理していきます。
なお、下記の記事では経済学の歴史的な流れをざっくりと解説しています。大きな流れを押さえておくと、この記事の内容もより理解しやすくなります。
シュンペーターとは?
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シュンペーターは、若くしてさまざまな分野で並外れた才能を発揮した人物です。
彼はオーストリアに生まれ、1906年にウィーン大学を卒業しました。1909年以後は、チェルノビッツ大学やグラーツ大学で教授を務めています。
その後、1919年にはオーストリアのK.レンナー内閣で大蔵相を務め、1921年から1924年まではビーダーマン銀行総裁、1925年にはボン大学教授となりました。
さらに1932年以降はハーバード大学教授を務め、アメリカ計量経済学会の創設にも関わりました。1937年から1941年には学会長を務めたほか、アメリカ経済学協会会長、国際経済学協会初代会長なども歴任しています。
とくに注目すべきなのは、20代の時点ですでに『理論経済学の本質と主要内容』『経済発展の理論』を発表し、自らの理論体系を築いていたことです。非常に優れた経済学者だったと言えるでしょう。
シュンペーターの経済発展の理論

シュンペーターは、「イノベーションがもたらす劇的な変化」こそが経済発展の主要因だと考えました。さらに、それは「自発的な変化」によってのみ生じると述べています。
たとえば、人口が増えること自体は「自発的な変化」ではありません。また、植民地支配によって特定の作物だけを生産して一時的に豊かになることも、自発的な経済発展とは言えないと考えました。
シュンペーターのイノベーションの考え方

シュンペーターは、イノベーションを「通常の経済循環からの軌道変更」と捉えました。
通常の経済循環が「連続的な変化」であるのに対し、イノベーションは「非連続的な変化」です。つまり、これまで当たり前だった価値観ややり方とは異なる、新しい流れが生まれることを意味します。
また、イノベーションは企業者によってもたらされるとしています。
ここでいう企業者とは、単なる経営者ではありません。「新しいものを生み出す立場の人」を指しています。たとえば、技術者や発明家なども企業者に含まれます。
シュンペーターのイノベーションの定義と5つの例
シュンペーターは、イノベーションを「新しいものを生産すること」、あるいは「既存のものを新しい方法で生産すること」と定義したうえで、次の5つの例を挙げています。
- 新製品の開発:iPhoneやパソコンなど
- 新生産方式の導入:トヨタ生産方式など
- 新しい市場の開拓
- 新たな資源の供給源の獲得:原材料の供給源など
- 組織の改革:水平型組織への変革など
さらに、イノベーションは常に「旧いもの」と並行して現れるとも述べています。
たとえばiPhoneも、登場した瞬間にガラケーを完全に置き換えたわけではありません。しばらくは共存し、その後に徐々に旧来の製品を淘汰していきました。
企業者の資質はどうあるべきか?
企業者は、必ずしも資本力があるわけでも、社会的地位が高いわけでもありません。
そのため、自分が信じるイノベーションを実行に移すのは非常に困難だとシュンペーターは述べています。そして、その困難を乗り越えるために必要な資質についても論じています。経済学というより、現代のビジネス論にも通じる内容です。
② 新しいことに反対し、慣習に戻ろうとする人に立ち向かうべき
③ 社会環境からの抵抗(法律や政治的な妨害など)にも耐えるべき
つまり、これらの障害を乗り越える強いリーダーシップが必要だということです。スティーブ・ジョブズも、こうした資質を備えた数少ない人物の一人だったと言えるでしょう。
まとめ
シュンペーターの『経済発展の理論』について解説しました。非常に古い本ではありますが、イノベーション理論の先駆けとなった重要な著作です。
いまでは、継続的なイノベーションが経済発展を支えているという考え方は広く共有されていますが、当時としては非常に新しい発想でした。
企業者の資質にまで踏み込んで論じている点も、現代から見てなお示唆に富んでいます。より深く理解したい方は、原文に挑戦してみるのもおすすめです。


