この記事では、マクロ経済学における重要な概念であるGDPについて詳しく解説していきます。
「名目」「実質」「一人当たり」GDPなど、何かと細分化されているGDPですが、この記事ではそれぞれ詳しく解説していきます。またGDPが経済動向にとってどのような意味があるのか、マクロ経済学的に何を意味しているのか解説していきます。
また、「世界全体のGDP推移」と「世界各国のGDP推移」をグラフで見ていきます。
GDP(国内総生産)とは?
GDP(国内総生産)とは、「国内」で生み出された「付加価値」の合計です。
「付加価値」という言葉が出てきましたが、簡単に言うと儲けです。
例えば、あなたがお弁当屋さんだとして、300円の材料で500円の弁当を作り販売したとします。
このお弁当が1つ売れたら、500円-300円=200円が「儲け」となりますよね。この200円が「付加価値」というわけです。このお弁当が1日に100個売れれば、200円×100個で2万円、1000個売れれば、200円×1000個で20万円が付加価値となります。
そして、この付加価値は、国内で生み出されたものに限ります。
つまり、海外で生産されて販売されたものはGDPには含みません。例えばトヨタが、アメリカに工場を建設して、アメリカで生み出された付加価値は、アメリカのGDPに含まれることになります。
番外編:GDPとGNPの違い
GDPは国内総生産というのに対して、GNPは国民総生産です。国内で生産されたものに限らず、例えば海外の日本支店で日本人が生産して得た所得なども含まれます。
結局GDPって何なの?
ここまで読み進めた方は、結局GDPって何を表すの?と思われるかもしれません。
GDPは簡単にいうと景気の良し悪しを表します。GDPが上昇していれば、好景気だと言えますし、逆にGDPが低下していれば、不景気だといえます。
その理由は、GDPは日本国が生み出す儲けの合計だからです。GDPが増えていれば、企業が儲かっていることになりますし、企業が儲かれば、所得が増えたり、新たな雇用が生まれたりするからです。
名目GDPと実質GDP
GDPには、大きく分けて2種類のGDPが存在します。1つ目が「名目GDP」、2つ目が「実質GDP」です。
名目GDPとは、国内で生産されたモノやサービスの付加価値の合計です。一方で実質GDPは、名目GDPに物価の変動の影響を取り除いたものを言います。
❶. 名目GDP
国内で生産されたモノやサービスの付加価値の合計
❷. 実質GDP
名目GDPに物価の変動の影響を取り除いたもの
名目GDPは、シンプルに国内の儲けの合計ですが、実質GDPは物価の変動も加味しています。
先ほどの例ですと、お弁当を500円で売っていましたが、原材料費の高騰などで、全体の物価が2倍になったとします。しかし、儲けが2倍になったとしても、普段生活するコストも2倍になりますから、景気が良くなったと感じないはずです。
アメリカのシリコンバレーでは平均年収は1000万円をゆうに超えますが、家賃が非常に高かったり、スーパーの食料品も高かったりなど、生活のコストも上がっています。
つまり、景気の良し悪しは、物価の変動も加味しないと、正確には図れません。よって景気動向を見たいのであれば実質GDPを見るのが適してきます。
物価の変動についての知識を詳しく知りたい方は、下記のリンクで解説しています。「インフレ」と「デフレ」について理解することができます。
インフレとデフレの違いをわかりやすく解説 – 発生原因や経済・金利への影響も –GDPの計算式・計算方法
GDPの計算する上で「三面等価の原則」を理解しなくてはいけません。
三面等価の原則は、「生産面」、「支出面」、「分配面」が常に等しくなるという考え方です。「生産面」は商品の供給のことです。GDPがこれに当たります。もう一つが「支出面」で、消費量のことです。3つ目が「分配面」で賃金のことです。
- 生産面(供給)= 国内総生産(GDP)
- 支出面(需要)= 国民が生産物を消費する量
- 分配面 = 国民に分配される量、賃金や税金など
上記の3つが全て等しくなるという考え方を、三面等価の原則と呼ぶ。
この三面等価の原則は、難しいようで、ものすごく単純な理論です。
生産物が増えたら、その分消費が増えていきます。当たり前ですよね。企業が去年より2倍の付加価値を生み出した。その付加価値は必ず消費されているはずです。消費されているということは、企業の売り上げが上がるわけですから、賃金に還元されているはずだ、という理論に過ぎないんです。
三面等価の原則の一般式(公式)
三面等価の原則には、有名な一般式があります。数式を使っているのでややこしく見えますがかなり単純です。
- 生産面: GDP = Y(yield)
- 支出面: 消費(C)+ 投資(I) + 政府支出(G)+( 輸出(X) - 輸入(M))
- 分配面: 消費(C)+ 貯蓄(S) + 税金(T)
生産面は「Y」で表されます。
支出面は、「消費(C)」と「投資(I)」、「政府の支出(G)」に、「輸出(X)」から「輸入(M)」を引いたものとなっています。輸出すればお金が増えますのでプラス、逆に輸入するとお金が減るのでマイナスになります。
分配面は、「消費(C)」するのか、「貯金(S)」するのか、「税金(T)」として無くなるのかで表すことが可能です。
より詳しく知りたい方は、下記のマクロ経済学の記事で解説しています。GDPは、マクロ経済学が扱う主要な指標です。
10分でわかるマクロ経済学 – 財市場、貨幣市場、労働市場をわかりやすく解説一人当たりGDPとは?
一人当たりGDPとは、GDPを人口で割り算した値です。GDPは、「国が儲ける力」だと説明しましたが、一人当たりは、国民一人当たりが儲ける力です。
例えば、中国のGDPは日本を抜いて世界第2位ですが、一人当たりGDPでいえば、日本の半分程度です。つまり、中国は国として高い生産力を持っていますが、一人一人はまだ貧しいというわけです。
GDPは「国として成長しているのか?」「景気が良いのか?」を計る指標なのに対して、一人当たりGDPは国民一人一人の豊かさを知るのに使います。
世界のGDPの推移とGDP成長率の推移
世界の実質GDPの成長率は内閣府が公表しています。世界全体は2009年を除き約2-4%成長し続けていることがわかります。
2009年になぜこれほどまで経済が落ち込んでるのかといえば、ご存知の通り「リーマンショック」が起きたからです。特に先進国が強く影響を受けていることがわかります。
リーマンショックについては下記の記事で詳しく解説しています。
リーマンショックをわかりやすく解説 – 原因や影響を10分で簡単に説明 –このグラフからわかることは、世界全体で見たら、リーマンショックのような大恐慌が起きない限りは安定して成長していることがわかります。
日本の実質GDPの推移
日本のGDPは1991年にバブルが崩壊し、経済成長が鈍化したのが特徴です。また2008年のリーマンショックでも大きく落ち込みを見せています。
バブルの崩壊は失われた10年と呼ばれ、長期にわたり低迷した時期です。就職氷河期などという言葉も生まれました。
アメリカの実質GDPの推移
アメリカの経済は世界で最も強く安定した成長を遂げています。リーマンショックの2008年付近は低迷しかけましたが、すぐに復活しています。
下記でリーマンショックの原因やどう対処したかを解説しています。
リーマンショックをわかりやすく解説 – 原因や影響を10分で簡単に説明 –中国の実質GDPの推移
中国は、世界で二番目のGDPを誇る経済大国になりましたが、2000年代に入ってから指数関数的に伸びているのが特徴です。
中国は共産党の独裁体制の下で、力強く大胆な政策を取れていることが、ここまで一気に成長を遂げれた原因とも言われています。
まとめ GDPって結局
GDPについて、網羅的に解説してきましたが、GDPに大きく影響を与える要素は人口だということが見えてきます。これだけ中国が躍進しているのを見ても、多くの国民が生産と消費をする土壌は、GDPへとても大きな影響を与えます。
三面等価の原則でも述べたように、生産面と消費面は必ずイコールで結ばれます。つまり、いくら生産を増やしても、消費することができなければ、生産をする意味がありません。
日本は人口減少へと突き進んでいるわけですが、少子化対策自体が一番の経済刺激策だったりするわけです。これから、人口が増え続け消費が増えると見込めれば、企業はより多く生産し、投資をするようになります。いわば人口は経済成長の基盤とも言える存在です。
アメリカの場合は、長期にわたり移民を受け入れ続けており、人口は維持されていますが、それが安定的な成長を後押ししていると言えるでしょう。日本のこれからの経済政策に期待したいところです。
昨日ある大学講師のあるレクチャーを受けました。「2000年の日本のGDPは世界で2位であった。2019年は26位になっている」と聞いて一同驚きました。帰宅後早速ネットでいろいろ調べてみましたが、どのサイトを見ても3位とあります。どこから「26位」が出てきたのかご存じでしょうか。その講師に直接聞くのが一番良いのですが、参加資格が弱い立場だったため聞きずらいのです。レクチャーのテーマは経済ではなく、大学生向けの「探求」の導入に使われた材料でした。
それとは別にこちらのサイトからの情報は大変分かりやすく参考になりました。