資本蓄積をわかりやすく解説!マルクスの資本論を読み解く

マルクスの資本論に記載されている「資本蓄積」について、可能な限り多くの図を使いわかりやすく解説します。

なぜ資本主義経済において、「資本蓄積」が起こり、そしてその蓄積は止めることができないのかを解説します。なお経済学関連の前提知識は必要ないように記載します。

なお「資本蓄積」について書かれている、大元のマルクスの「資本論」について知りたい方は下記のリンクで解説しています。

10分でわかるマルクスの「資本論」入門。初心者にも分かりやすく要約・解説します。

剰余価値とは何か?

資本蓄積について解説する前に「剰余価値」について理解しておく必要があります。

剰余価値とは「労働者が生み出す労働賃金以上の価値」のことです。

例えば、あなたが月給20万円で労働しているとして、その労働で月に20万円以下の価値しか生みださなければ、会社は成り立ちません。

つまり、労働者は払われている労働賃金以上に価値を生み出すことによって会社は成立しています。資本家は、剰余価値を最大化することによって存続し続けようとします。

剰余価値は何に使われるのか?

では資本家は生み出した剰余価値を何に使うのでしょうか?

小規模な商店なら資本家が全て稼いだ分を使ってしまうかもしれないですが、大きな企業は、すべて使うことはありません。次の拡大生産のために使うわけです。

拡大生産のために剰余価値は使われるのですが、マルクスは剰余価値は2つの資本に変換されると説きました。

1つ目が、可変資本です。労働力や原材料のことで、生産する総量によって変動する資本です。
2つ目が、不変資本です。設備投資や機械への投資など、生産量にかかわらず価値が維持される資本です。

剰余価値は2つの価値に変換される

可変資本 労働力や原料など生産量に依存して変化する資本
不変資本 設備や機械などの生産量に依存しない資本



資本蓄積は有機的構成を高める

ここまでくると資本蓄積を理解する土台が整いました。

マルクスは、資本家は剰余価値を、可変資本と不変資本に変換する際に、「その有機的構成」を高めると説きます。

非常に難しい言い方ですが、有機的構成は下記のように定義されています。

有機的構成 = 不変資本 / 可変資本

有機的構成を高めるとは、つまり不変資本をなるべく増やし、可変資本を減らす方向に進むということです。

簡単に言ってしまえば、人をなるべく使わずに機械化する方向に進んでいくよ、と言っています。

資本蓄積は加速する

資本蓄積は「それ自体がさらに加速する条件」を生み出すとマルクスは説明します。それはなぜでしょうか?

剰余価値は、有機的構成を高めながら変換され続けます。つまり、機械化がどんどん進む一方で、労働者はいらなくなっていきます。

労働者がいらないのですから、労働力が供給過多になり、失業者が増えます。そうなると安い給料でも働きたいという人で溢れかえります。

労働力が安くなれば、労働力の可変資本が減るわけですから、さらに有機的構成を高めます。

最終的には機械や土地などの不変資本は資本家のみが握り、労働者は貧しいままになり、格差は広がり続けるとマルクスは結論付けたんですね。

資本蓄積が意味するもの

資本蓄積の仕組みは、現代に置き換えても、非常に示唆のある考え方です。

例えば、グーグルなどの巨大企業は収益を拡大するのに労働者を必要としません。ソフトウェアによって可能な限り自動化(不変資本を拡大)しています。

車を作る産業であれば、機械化には限界があり、ある程度生産量と労働力には相関性がありました。

今やテクノロジーによって拡大生産に対して労働力がいらない時代に突入し始めています。テクノロジー企業のトップの資産額は全世界の資産のほとんどを握っています。格差は今も広がり続けています。

マルクスの資本蓄積は、このような資本主義の限界を見抜いていたのかもしれません。

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