議院内閣制は、日本やイギリスで採用されている政治制度ですが、正確に理解している人は少ないでしょう。
この記事では、議院内閣制についてわかりやすく解説します。専門的な用語は使わずに図を用いて説明します。
なお、「議院内閣制」を理解する上で「民主主義」や「議会制民主主義」についても知っておくとより理解が深まります。下記のリンクで解説しています。
10分で分かる民主主義 – わかりやすく歴史や日本でいつから始まったのかを解説10分でわかる議会制民主主義 – わかりやすく利点や問題点を解説議院内閣制とは?
議院内閣制とは、簡単に言うと「国会が内閣を選ぶ政治制度」です。
「国会?」「内閣?」と思われた方、安心してください。1つずつ説明します。
まず、国会とは「法律を作るところ」です。テレビ中継で大勢の国会議員が議員席に座っている場面を見た事があるでしょう。あれが国会です。彼らは法律を決めています。
次に、内閣とは「政治を執り行うところ」です。例えば「国家予算を何にどのくらい使うのか?」を決めたり「福祉制度をどうするか?」を決めたりしています。まさに国をどうしていくのかの決定権を持つ機関です。
つまり、議院内閣制の「国会が内閣を選ぶ」とは、法律を決めている国会議員の中から、政治を執り行う人を選出するということです。
日本の内閣総理大臣は、議席数が一番多い政党(与党)から選ばれています。また内閣を構成する大臣たちも同様に、与党から選ばれます。議院内閣制は、国会と内閣が密接に結びついている制度という事です。
国会と内閣は独立すべきもの
「国会が内閣を選ぶことの何が珍しいの?」という疑問が浮かぶかと思います。
実は政治の世界では、このやり方は極めて特徴的です。その理由は、行政権(内閣)立法権(国会)は分離独立すべきものだからです。「三権分立」という言葉を聞いた事がありませんか?
独裁的な政治にしないために、権力を分散すべきという考えが三権分立です。立法権と行政権、そして司法権はそれぞれ独立し監視し合う事で円滑な政治を行えるという考え方です。
しかし、上の図のように議院内閣制は、国会が内閣を選ぶことになります。つまり、綺麗な正三角形ではなく歪んだ権力構造になっています。
しかし、この歪みある権利によって是正されています。それは内閣不信任と解散権です。
内閣不信任は、国会が内閣に対して、「あなたたち全然ダメだから、総理大臣も大臣もみんな選び直してね」と再度選び直せる権利です。
解散権は「そんなに内閣が不満なら、国民の声を聞いてみましょう。選挙やり直し!」という権利です。これら2つの権力によって、いわば互いが監視し合いバランスを保っていると言えます。
議院内閣制のメリット
議院内閣制のメリットは下記の通り大きく2つです。
- 内閣総理大臣を最悪の場合に解任できる
- 過剰な政策を行う人は選ばれない
1. 内閣総理大臣を最悪の場合に解任できる
先ほども説明したように、国会と内閣が独立せずに密接に関係していますから、最悪の場合、内閣総理大臣に不信任案を提出し、内閣を辞職させる事ができます。
2. 過剰な政策を行う人は選ばれない
国会議員の最大派閥(与党)から、総理が選ばれるので、政党内の支持が厚い人が選ばれます。つまり、過激な政策を掲げる人ではなく、与党の政策に沿った方針を取る人が多いです。
議院内閣制と大統領制との違いは?
議院内閣制の特徴は、国会と内閣が密接に結びついている事です。選挙によって国会議員が選ばれた後に、その最大派閥である与党から、内閣総理大臣が選任されます。さらに、国会には不信任、内閣には解散権を与えられています。
一方で、大統領制は議員と大統領は完全に独立しています。大統領は国民投票によって選ばれ、議員を兼任しておらず、独立した行政機関として権利を行使します。議院内閣制のように、国会が大統領に働きかけることはできません。ましてや任期中に辞めさせることは不可能です。
ちなみに、大統領は国会とほぼ接点がありません。一年に一度顔を出すくらいで全く独立して運営されています。こうして見ると議院内閣制がいかに特徴的かを理解できるでしょう。
大統領制についてより詳しく知りたい方は下記のリンクで解説しています。
10分でわかる大統領制 – メリットやデメリットをわかりやすく解説まとめ
議院内閣制についてまとめました。今でこそ当たり前の議院内閣制ですが、長い年月をかけて培われています。下記のリンクで詳しく解説していますが、民主主義という大きな歴史のムーブメントの中で、民意を効率的に正しく反映する手段として「議院内閣制」や「大統領制」が発展してきました。
10分で分かる民主主義 – わかりやすく歴史や日本でいつから始まったのかを解説
議院内閣制が本当に民意を反映する効率的な手段なのか、改めて考えて見るのも良いでしょう。