ゲーム理論とは、複数の人や企業が、互いの行動を意識しながら意思決定を行う状況を分析する理論です。
この理論は、数学者のジョン・フォン・ノイマンと経済学者のオスカー・モルゲンシュテルンによる共著『ゲームの理論と経済行動』によって体系化されました。
現在では、経済学だけでなく、心理学・生物学・政治学など、幅広い分野で活用されています。
本記事では、ゲーム理論の基本を「囚人のジレンマ」などの具体例を用いながら、初心者向けにわかりやすく解説します。
経済学全体をざっくり理解したい方は下記の記事も参考になります。
ゲーム理論が誕生した背景
ゲーム理論は、古典派経済学の前提に疑問を投げかける形で発展しました。
古典派経済学では、人間は常に合理的に行動する合理的経済人であると仮定されています。
これは、「自分の利益(効用)を最大化する選択を常に行う人間」という考え方です。
この前提は、ミクロ経済学にも受け継がれています。
しかし現実の人間は、必ずしも合理的に行動するとは限りません。
たとえば、本当はやりたいことがあっても、周囲の目や状況を考えて別の選択をすることがあります。
つまり、人間の意思決定は「他人の行動」や「状況」に大きく左右されます。こうした相互作用を分析するために生まれたのが、ゲーム理論です。
ゲーム理論の代表例「囚人のジレンマ」
ゲーム理論の代表例が囚人のジレンマです。
2人の容疑者が別々に尋問され、互いにコミュニケーションできない状況を考えます。
それぞれの選択肢は次の2つです。
- 自白する
- 黙秘する
選択によって結果は次のように変わります。
- 一方が自白・もう一方が黙秘
自白:無罪 / 黙秘:懲役10年 - 2人とも黙秘
両方:懲役2年 - 2人とも自白
両方:懲役5年
全体として最も良い結果は「2人とも黙秘(懲役2年)」です。
しかし、相手が裏切るリスクを考えると、多くの場合は「自白」を選び、結果として両者とも懲役5年になります。

このように、個人が合理的に行動した結果、全体としては非効率な結果になる現象を「囚人のジレンマ」といいます。
パレート最適とナッシュ均衡
ゲーム理論では、重要な概念としてパレート最適とナッシュ均衡があります。
パレート最適とは、これ以上状況を良くしようとすると、必ず誰かが不利益を受けてしまう状態のことです。
言い換えると、関係する全員にとって、これ以上改善できないバランスのとれた状態を指します。
囚人のジレンマでは、「2人とも黙秘(懲役2年)」がパレート最適です。
一方、ナッシュ均衡とは、それぞれの人が相手の行動を前提に最適な選択をした結果、誰も自分だけ行動を変えようとしない状態のことです。
たとえ全体としてはより良い結果があったとしても、個人の立場では行動を変えるメリットがないため、その状態にとどまります。
囚人のジレンマでは、「2人とも自白(懲役5年)」がナッシュ均衡になります。

つまり、「個人にとって合理的な選択」と「全体にとって最適な選択」が一致しないことがある、という点がゲーム理論の重要なポイントです。
ゲーム理論は何を示したのか
ゲーム理論は、「人は常に合理的に行動する」という古典経済学の前提を補うための理論です。
現実の意思決定は、単純に自分だけで決められるものではなく、他人の行動やその場の状況に大きく影響されます。
古典経済学が世界をシンプルに説明するための理論だとすれば、ゲーム理論は、その前提を現実に近づけて考えるためのものだといえます。
この考え方は、その後、行動経済学へと発展し、人間の意思決定をより現実的に分析する分野へとつながっていきました。
ゲーム理論は、「人間は常に合理的に行動する」という古典経済学の前提を補完する理論です。
現実の意思決定は、単純な選択ではなく、他人の行動や状況に影響される複雑なものです。
古典経済学は世界をシンプルに理解するための理論ですが、ゲーム理論はそのシンプルな前提を現実に近づける役割を果たしています。
この考え方は、後に行動経済学へと発展し、人間の意思決定をより現実的に分析する分野へとつながっていきました。


