10分でわかるファシズム ーなぜ誕生したのか?わかりやすく解説

ファシズムは、国民の自由を統制し、外国への侵略を行う独裁制という「漠然とした」イメージを持たれている方が多いのではないでしょうか?

この記事では、ファシズムを10分でわかりやすく解説していきます。また、なぜファシズムは生まれるのか?という根本的な疑問に対しても考えていきます。

なおファシズムは共産主義や社会主義とは全く別物です。下記リンクで詳しく解説しています。

10分でわかる社会主義と共産主義の違い – わかりやすく解説

ファシズムとは何か?

ファシズムの定義は非常に曖昧です。第二次世界大戦の時には、蔑称として使われていたこともあり、その定義を曖昧なものにしています。

しかし、ファシズムをなるべく簡潔に述べるなら

労働者階級(一般国民)を、独裁政治によって弾圧し、外国に対しては、自らの主義主張を押し広げようと侵略行為を取る政治体制

と言うことができるでしょう。

独裁政権がファシズムだとは一概には言えないわけです。国民を強く弾圧し、自由を奪い、国外にまで侵略をしようとして初めて、ファシズムと言うわけです。

ファシズムの起源

では、ファシズムはどのように始まったのでしょうか?

ファシズムは1922年〜1943年にイタリアの政権を握ったムッソリーニが率いた国家ファシスト党が語源となっています。この国家ファシスト党は、国民を強く弾圧して、他国を侵略して、自らの人民に組み入れるという全体主義を標榜していました。

それ以降、国家ファシスト党と同様の政治的イデオロギーを持つ国家を「ファシズム」と呼ぶようになりました。もちろん、ドイツのヒットラーもファシズムの筆頭ですが、同様の政治思想を持っていたことは自明の通りです。

ファシズムはなぜ台頭したのか?

第一次大戦から第二次大戦の終戦に至るまでに「ファシズム国家」は台頭を繰り返しました。イタリアのムッソリーニ以降に、似たような国家体制が生まれなければ、「ファシズム」と言う言葉自体が生まれなかったかもしれません。

では、なぜ何度もファシズムは生まれてしまうのでしょうか?

イタリアのムッソリーニと、ドイツのヒトラーが誕生した背景を探ることで、なぜ誕生したのか見ていきます。

イタリアのムッソリーニ誕生の理由

第一次世界大戦の戦勝国だったイタリアですが、膨大な戦争費用の返済によって、急激なインフレーション(物価上昇)が起きました。失業率も増加し、多くの労働者が貧困にあえぐことになります。

そんな中で国民は、政府に不信感を抱き、農地を不法に占拠したり、社会改革を起こそうとします。

それら国民を弾圧し、抑え込むために国家ファシスト党が誕生しムッソリーニも生まれました。

ドイツのヒトラー誕生の理由

ドイツのヒトラーは、イタリアとは異なり第一次世界大戦の敗戦国でした。多額の賠償金を支払わなくてはならず、国民生活は困窮しました。

そんな中で、ヒトラーが今の経済の仕組みではだめだ、社会主義に移行しようとナチ党を結成し支持を集めました。


イタリアとドイツでなぜファシズムが生まれたのかといえば、両方とも経済的に困窮していたと言うことです。当時の貧困は今とは桁違いで、食べるものもなく飢え死にするレベルです。そのような厳しい状況下だからこそ誕生したと言えるでしょう。

ファシズムは政治の問題と考えられがちですが、実は経済的困窮が背後にあると言う意味では、経済問題点もあるわけです。

ファシズム誕生の背景

イタリアとドイツの状況を見ると、当時とても貧しかった国家情勢が見て取れます。しかし、この状況は、イタリアやドイツに限った話ではありませんでした。

例えば、産業革命によって強国の地位を築いたイギリスも、長い不況が続いていました。イギリスは資本主義の成功例でしたから、その他の国々は「もう資本主義は限界なんじゃないか?」といったムードが漂っていました。

そのような中で、「マルクスの資本論」が発表され、社会主義を試してみようと国民が思うのは自然な流れでした。

10分でわかるマルクスの「資本論」入門。初心者にも分かりやすく要約・解説します。

メモ:当時の経済状況をより深く理解するには?

ちなみに、下記の記事で解説している「恐慌の歴史」を知ると、どれだけ世界が経済の安定に苦しめられてきたか理解できます。

世界恐慌の原因と発生メカニズムを分かりやすく解説 – 影響や各国の対策も解説 –

現代では、社会主義なんて欠陥だらけじゃないか、と思われるかもしれませんが、当時としては、新しく、ちょっと流行りの考え方でした。

イタリアは、その流れを食い止めようとムッソリーニが誕生したわけですが、ドイツにおいては、むしろ社会主義革命を進めようとヒトラーが誕生したわけです。その後、ソ連や中国も同様に、社会主義革命を起こします。

ファシズムへの批判 社会主義はファシズムを生む

自由主義と資本主義の国では、ファシズムは生まれていないわけですが、なぜ社会主義の国では、ファシズムとなることが多いのでしょうか?

その理由は、ハイエクの著書「隷属への道」に書かれています。詳しくは下記のリンクで解説しています。

5分でわかるハイエクの「隷属への道」要約。ケインズ思想との違い

簡単に言うと、社会主義は、政府が計画して生産計画を立てるため、国民が政府に不満を抱きやすく、そうなると政府は国民に圧力をかけるようになるという理屈です。

北朝鮮も、国家が計画する農業などの計画に、国民が不満を抱かないよう、言論弾圧がされていますよね。社会主義国家を維持するためには、国民を弾圧することが不可欠だと、ハイエクは批判しました。

まとめ

ファシズムの定義から、なぜファシズムが生まれ、その誕生の背景には何があったのか解説しました。

ファシズムは、非常に暴力的で、非論理的な政治理念だと漠然としたイメージを持たれがちですが、ファシズムが生まれた背景には、経済的な困窮がありました。

考えてみてください。あなたの友人や恋人、そして家族が飢えに苦しみ死んでいく姿を、もし目の当たりにしたのなら、今の政治体制を憎み、新たな経済体制を模索したいと思うかもしれません。また絶対的な権力を持つ独裁者ですら藁をもすがる思いで支持してしまうかもしれません。

つまり、よく「歴史問題」と「経済問題」を切り分けて議論がされがちですが、慎重に議論するのであれば、当時の経済的な状況に光をあてる必要があります。

経済学とは「資源の最適な分配」を考える学問です。ファシズムのような、悲惨な国家へと歩まないためにも、資源を最適に分配し、経済問題を解決することが、重要だということを理解できたかと思います。

なお経済学について、ざっくり知りたい方は下記のリンクで解説しています。

わかりやすい経済学 – 古典経済学から近代経済学まで10分でざっくり解説

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