ジョン・ロックは、1632年から1704年に活躍したイギリスの哲学者です。
彼は「政治哲学者」とも呼ばれ、アメリカ独立宣言やフランス革命に大きな影響を与えました。今でこそ政治や経済は独立した学問として成立していますが、当時は哲学と密接に結びついていました。
哲学とは、「考え方や思想そのもの」を問い直す学問です。そのような基礎的な思考から、「政治はどうあるべきか」「経済はどうあるべきか」といった議論が発展してきました。
この記事では、ジョン・ロックの有名な著作『統治二論』の要点を、5分で理解できるようにわかりやすく解説します。
統治二論は2つの論文で構成される
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『統治二論』は、前編と後編の2つの論文から成っています。1つ目は、当時のカトリック的な政治観、特に王権神授説への批判です。2つ目は、国家が国民を「政治的に統治」する正当な根拠を示したものでした。
- 既存のカトリック的な考え方への批判
- 国家が政治的統治を行う根拠
統治二論の第1部で行われた批判

第1部で行われたのは、既存のカトリック的な政治思想への批判でした。
当時広く受け入れられていた考え方の1つに、アダムから始まった人類の系譜の中で、統治する権利が正統な子孫へと受け継がれていくという見方がありました。つまり、神から与えられた統治権が特定の家系に受け継がれ続け、その他の国民は統治されるべき存在なのだ、という考え方です。
正確には、この背景にはフィルマーの「王権神授説」があります。統治する者と統治される者は神によってあらかじめ定められている、という考え方です。いわば、特権階級だけが権力を持つことを正当化する理論でした。
ジョン・ロックは、この考え方を強く批判しました。キリスト教そのものを否定したわけではありませんが、「政治的統治は神によって特定の人に与えられたものだ」という考え方には真っ向から反対したのです。
第2部 政治的統治はなぜ必要か?
自然状態を考える
ジョン・ロックは、国家になぜ政治的統治が必要なのかを考えるために、まず「自然状態」という概念を持ち出しました。
自然状態とは、「人間が誰からも政治的に統治されていない状態」のことです。
たとえば、誰かから危害を加えられた場合、自分でできる範囲で反撃するしかありません。そこに国家や政治は関与しません。
ただし、ここで注意したいのは、ロックのいう自然状態は、日々争いばかりが起こる無秩序な世界ではないということです。人間は神によって創られた存在であり、「あるべき姿」を理解する理性を備えているため、基本的には安定した状態が想定されています。
所有権の誕生
人間は神によって創られた存在であり、生きていくために必要な資源もまた神によって与えられているとロックは考えました。
たとえば、地上にある土や木、植物や食料など、自然界に存在するものすべてです。森の中で木の実を見つけて食べても問題がないのは、そこに「所有権」の考え方があるからです。
まず、人間は自分自身の肉体に対する「所有権」を持っているとされます。そして、その肉体が「労働」することで得たものには、その人の所有権が及ぶとロックは考えました。
つまり、自分の労働によって得たものは、自分のものになる。そして、その「所有権」は守られなければならない、とされたのです。
しかし現実には、人間は過ちを犯し、他人の所有権を侵害することがあります。畑で採れた作物を盗んだり、他人の家の果物を勝手に持ち去ったりすることもあるでしょう。自然状態では、このような所有権侵害が起こりやすいとロックは考えました。
そこでロックは、政治的統治があることで、自然状態よりも所有権が守られやすくなり、結果として神の定めた理想に近づくのだと説明します。
つまり、神が人間に与えた権利である「所有権」を守るためにこそ、政治的統治が必要なのだとロックは説いたのです。
まとめ
ジョン・ロックの思想は、「フランス革命」や「アメリカ独立宣言」に大きく結びつきました。
彼は、政治的統治とは、神に権利を与えられた特権階級が人々を支配するためにあるのではなく、神が人間に与えた権利である「所有権」を守るためにあるのだと説きました。
それまでの政治のあり方は、権威ある教会や支配階級が、寄付や権威を背景に国民を管理するためのものでもありました。
ロックの思想は、そうした仕組みを根底から覆すものでした。いわば、特権階級のもとにあった力を民衆の側へ取り戻すための思想的革命だったとも言えます。ちなみに、ジョン・ロックの思想はプロテスタント的な価値観とも親和性があり、アメリカでは多くの人がキリスト教のプロテスタントを信仰しています。
また、プロテスタント的な考え方は資本主義とも非常に相性がよく、経済発展を遂げた国にはプロテスタントの国が多いとされています。下記のリンクでは、その背景を論じた名著『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』について解説しています。


