21世紀の資本をわかりやすく解説|ピケティの r > g と格差拡大の本質

『21世紀の資本』は、膨大な歴史データを用いて、資本主義社会における格差拡大を実証した本です。著者はフランスの経済学者トマ・ピケティです。

ピケティのすごいところは、難解な数式や抽象的な理論だけに頼るのではなく、長期にわたる歴史データを積み上げることで、資本主義の未来を予測した点にあります。

この記事では、トマ・ピケティの『21世紀の資本』に登場する膨大なグラフの中から、特に重要なものだけをピックアップし、10分でわかるように解説します。

なお、『21世紀の資本』を読む前に、マルクスの『資本論』もざっくり理解しておくと理解が深まります。どちらも資本主義の問題点を指摘しているからです。

マルクスの資本論をわかりやすく解説|剰余価値・資本蓄積・資本主義の問題点
経済学全体についてざっくり理解したい方は、下記の記事もおすすめです。全体像をつかむことで、この記事の理解がより深まります。

経済学とは何か?歴史をわかりやすく解説| 古典経済学から近代経済学まで

r > g 資本収益率はGDP成長率を上回る

ピケティが膨大な史実から導き出した結論は、r > g という式でした。

ピケティの結論
r > g
r = 資本収益率
株式や不動産などの資本から、どれだけ収益を得られるかを示す。
rが高いほど、資産を持つ人は資産から大きな利益を得られる。

g = GDP成長率
経済全体の成長率。国民所得や生産の伸びと深く関わる。

ピケティは、r > g の状態が続く限り、格差は拡大しやすいと結論づけました。

なぜなら、労働や経済成長によって所得が増えるスピードよりも、資産を持つ人の資本が増えるスピードのほうが速いからです。

そして、この主張を支えるために、ピケティは膨大な歴史データを提示しました。以下では、その中でも特に重要なデータを見ていきます。

資本 / 所得比率

まず注目したいのが、「国民総所得」に対して「資本」がどれくらいあるかを示すグラフです。これは、資本が国民の所得の何年分にあたるかを示す指標です。

ピケティは、歴史的に見ると「資本 / 所得比率」は上昇し続ける傾向にあると示しました。

下記の 図4.4図4.8 は、ヨーロッパとアメリカの資本 / 所得比率を示しています。

出典(図4.4:ヨーロッパの民間資本と公的資本)

出典(図4.8:米国の民間資本と公的資本)

ヨーロッパもアメリカも、1950年以降は資本 / 所得比率が上昇し続けています。ヨーロッパで1910年以降に一度低下しているのは、戦争によって資本家の資産が破壊・解体され、例外的に格差が縮小したためだとピケティは説明しています。

次は、世界全体の資本 / 所得比率の将来予測です。

出典(図5.8:世界の資本/所得比率)

ピケティは、このまま資本 / 所得比率は上昇し続けると予測しています。その背景には、経済成長率の鈍化があります。経済全体があまり成長しない一方で、既に蓄積された資本は増え続けるからです。

所得格差

次に見るべきなのは、上位1%や上位10%の所得比率です。

資本を持つ人々の所得は増え続けており、労働によって賃金を得る人々との差は広がり続けています。

下の図は、上位1%が国民所得に占める割合を示したものです。1950年以降、特にアングロ・サクソン諸国で所得格差が大きく広がっていることがわかります。

出典(図9.2:アングロ・サクソン諸国における所得格差)

出典(図9.3:大陸ヨーロッパと日本での所得格差)

大陸ヨーロッパや日本でも上昇は比較的緩やかですが、完全に格差拡大を免れているわけではありません。

資本は増え続け、その資本は限られた人が握る

ここまでのデータから、ピケティは次の2点を読み取っています。

  1. 給与所得の増加よりも速いスピードで資本が増え続ける
    「資本 / 所得比率」のグラフは長期的に右肩上がりである。
  2. その資本は限られた人々が握り続け、その傾向は強まっていく
    上位1%の所得や資産の比率が上昇している。

つまり、資本収益率の r は、GDP成長率の g を上回りやすいということです。

GDP成長率は、ざっくり言えば所得の伸びです。したがって、労働や経済成長による所得の増加よりも、資本の増加のほうが速いということになります。

下の図は、古代から2100年までの rg の推移を示したグラフです。

出典(図10.9:資本収益率と成長率の長期推移)

驚くべきことに、古代から現代まで、基本的には資本収益率が成長率を上回り続けてきました。戦争によって資本が破壊された時期だけ格差は縮まりましたが、ピケティはそれを歴史上の例外だと見ています。

要するに、次のようにまとめられます。

  • r > g は歴史的に見ても成立しやすく、今後も続く可能性が高い
  • 資本は限られた人の手に集中し、格差は広がりやすい

ピケティは、過去の膨大なデータを読み解くことで、資本主義の構造的な限界を鮮やかに示しました。

ピケティの解決策は?

ピケティは、資本主義は放っておけば格差を拡大させると結論づけています。

ちなみに、資本主義と対立的に語られる考え方として社会主義があります。社会主義なら格差は抑えやすい一方で、別の問題もあります。両者の違いについては下記の記事で解説しています。

資本主義と社会主義の違いとは?わかりやすく比較|仕組み・メリット・デメリットを解説

ピケティは、主に次の2つの対策が必要だと考えました。

  1. 資産家への課税を強化する
    過去に r と g の差が縮まったのは、主に戦争の時期でした。その背景には、資産の破壊や高い課税がありました。つまり、資産家への課税は格差是正に有効であることが歴史的に示されているとピケティは考えます。
  2. タックスヘイブンをなくし、各国が協調して税制を整える
    資産家への課税を強めると、資産家は税率の低い国へ資金を移そうとします。これがタックスヘイブンの問題です。各国が協調して税制を整えなければ、資本が海外に逃げてしまい、格差問題は解決しにくいとピケティは述べています。

まとめ

ピケティの解決策は、あくまで資本主義の歴史データから導き出された現実的な提案です。

『21世紀の資本』が示したのは、資本主義は完璧な制度ではなく、放置すれば格差を拡大させる構造を持つということでした。

ピケティはこの本を通じて、人々が資本主義の現実を正面から見つめ、より良い制度へと修正していくきっかけになればと考えているのかもしれません。

おすすめの書籍

『21世紀の資本』は、膨大な歴史データの解説に多くのページを割いています。つまり、過去のデータを丁寧に読むことこそが、この本の核心でもあります。しっかり理解したいなら、やはり原著にあたるのが一番です。

『21世紀の資本』は600ページを超える大著で、内容も決してやさしくはありません。経済用語や背景知識に自信がない方は、下記の入門書から入るのもおすすめです。

私も原著を読んだあとにこの本を読みましたが、重要なグラフだけをうまく抽出しており、エッセンスをつかむにはとても優れた本だと思いました。

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